ProActiveの30年を超える進化と5世代の歴史
SCSKが提供するERP「ProActive」は、1993年に住商情報システム(SCS)から国産初のERPとして開発・発売された、長い歴史を持つ製品だ。その後、SCSはCSKと合併し、現在のSCSKとなった。ProActiveは31年にわたり、時代の変化に合わせて進化を続け、現在では6,600社以上、300以上の企業グループに導入されている。
初期のProActiveは、企業間や地域を超えて業務連携を支えるPCベースのシステムだったが、1999年にはクライアント・サーバーモデルからOracle標準に基づくカスタマイズ性の高いWeb版へと進化した。2005年には完全Webベースとなり、外部環境の変化に耐える仕組みを提供。2018年にはSaaSモデルであるProActive for SaaSが導入され、最新の制度要件に対応する標準機能をクラウド基盤で提供するようになった。そして2021年には、ProActive C4をリリース。変化するビジネス環境にクラウドでスピーディーかつ柔軟に対応。画面パーソナライズ機能やマルチデバイス対応など使いやすさにこだわったUI・UXで業務効率を向上させ、お客様の成長を支援している。
この変遷を長きにわたり見てきたのが、SCSK ProActive 事業本部部長の栗原 直氏だ。2000年に住商情報システム(SCS)に入社し、その後の24年間ProActiveの営業活動に従事。この間、ProActiveは5世代にわたる製品の進化を遂げた。特に大きな変化を感じたのは、初期のクライアントサーバー型から、2005年にWebブラウザ版をリリースした時だったという。
「当時、ProActiveのWebベースへの移行は先駆的でした。これによってそれまでの、OSのバージョンなどの外的要因による問題が解消されたからです」と栗原氏は振り返る。
ProActive C4は、データベースにMySQLを採用し、アジャイル開発を取り入れるなど、最新の技術を駆使して開発された。これにより、ProActiveはクラウド時代に対応したERPへと進化した。
栗原氏は、ProActive C4の開発について、「現場から有志を募って仮想的な組織を作り、ERPのあるべき姿を徹底的に議論してコンセプトを作り上げました。社内の会議を通してから開発計画を立てるという構想を練り上げるだけで 1 年ちょっとかかったと思います」と、その苦労を語る。
Horizontal ✕ Verticalの両軸戦略
SCSKは、ERP「ProActive」に加えて同じく自社製品である製造業向けの生産管理システム「atWill」、建設工事業向けの基幹業務システム「PImacs」を統合し、デジタルオファリング事業への転換を図っている。ProActive事業を従来のERPから、業種と業務のベストプラクティスを兼ね備えた「ビジネスプラットフォーム」へ進化させようとしている。具体的には、「Horizontal」(業務共通サービス)と、「Vertical」(業界・業種特化型サービス)の両輪で事業を展開していく。
Horizontalでは、会計や人事などの基幹業務モジュールに加え、認証やAPI連携、クラウドネイティブ対応のローコード開発基盤などを提供。市況の急速な変動や労働力減少による業務負荷の増大に対し、柔軟で迅速な対応能力を高め、業務の効率化を支援する。また、Verticalでは、特定の業界・業種向けに最適化されたテンプレートやAI機能を組み込み、業界・業種固有の課題を解決し、業務効率化・高度化のバランスを実現する。
これにより、SCSKは企業のITシステムの強化にとどまらず、顧客のデジタルトランスフォーメーションを推進していく考えだ。栗原氏は、「システムやクラウドサービスを売るというところから、顧客にとってのビジネス価値創出への転換です。より上位の考え方にシフトするということです」とProActive事業の目指す姿を語る。
Horizontal:BPaaSで顧客の会計業務課題を解決
Horizontalな共通領域において重点となるのが、BPaaS(Business Process as a Service)への取り組みだ。その第一弾として、会計領域のBPOサービスを2024年9月17日から開始した。
このサービスは、業務構築からシステムの導入、BPO業務の仕組み構築までのステップをあらかじめモデル化した一気通貫の経理DXモデルを提供するものだ。さらに、グループ会社の業務巻き取りなどで負荷が高まる管理業務をBPOとして委託することで、お客様の経理部門はより高度な企画業務領域にリソースを集中させることができる。栗原氏は、「労働人口の減少や人材難で経理や会計の人員も減少する一方、制度改正対応や業務の高度化など、求められる業務は増えている。こういう状況なので、すべての会計業務をセットで外に出すというアウトソースへのニーズは確実に増えてくるでしょう」と今後の予測を語る。
ターゲットは、100億から1000億円の売上規模の企業で、経理業務のメンバーが20人以内の企業となる。特に中堅中小企業への展開を視野に入れている。ERPといえば、SAPなどの外資系企業との競合も考えられるが、この市場の中での競合はさほど多くないという。栗原氏は、「外資との競合とかそういうのは、最初からあまり気にしませんでした。SAPには、SCSK社内でも別の部隊があり、役割分担ができていると思います。むしろ、国産の会計システムで、商社系やOA販社と競合することはありますが、エンタープライズ向けのERPにおいて当社は強みを持っています」と、競合との差別化についても言及する。
Vertical:業種に特化した業務ノウハウを活かす
Verticalな業界・業種特化型サービスにおいても、SCSKはさらなる強化を図っている。具体的には、製造業や流通業など、特定業界・業種向けに最適化されたテンプレートや特化型AI機能をProActiveに組み込み、業務プロセス見直しと自動化を実現する。
栗原氏は製造業の事例をこう語る。
「製造業では一見、同じように物を作っているように見えますが、実際には製品によって生産工程や考え方が大きく異なります。たとえば、食品を製造する企業では、不定貫と呼ばれる容量が変動する材料を使った生産管理の仕組みがあります。一方で、部品を仕入れて組み立てる生産管理の方法もあり、これだけでも生産管理の考え方やMRP(資材所要計画)の構築方法が全く異なってきます」と、業界ごとに異なる業務の多様性を指摘する。
SCSKは、こうした業界ごとのニーズに対応するため、ProActiveをカスタマイズせずに標準機能で対応できるFit to Standardでシステム導入を進めている。栗原氏は「パッケージに合わせたアプローチを求める顧客が増えてきているのは、時代の変化を反映していると思います」と、顧客の意識変化にも言及した。
先進技術を融合した価値創造企業へ
SCSKは、ProActive事業において、HorizontalとVerticalの両面から、さらにアプリケーションへのAI搭載を積極的に推進することで、さらなる価値創造を目指している。事業環境の変化に対する圧倒的なアジリティ、業界・業種特化型AIによる業務効率化と自動化、そして、AI活用によるデータ駆動型の高度な経営判断を提供する。
また、栗原氏は今後のビジネス展開について、「SCSKという名前を聞くと、多くの方がシステム販売会社というイメージを持たれますが、今後はそのイメージを刷新していきます。私たちはシステムを提供するだけでなく、価値を創出する仕組み全体を提供する企業へと変わっていきます」と述べ、新たな価値創造企業への転換を示した。そして、「お客様には、システムの運用や外部要因による変化に伴う負荷を、すべて私たちにお任せいただきたいというのが、私たちからのメッセージです」と強調した。
SCSKは、自社の技術知財であるProActive、atWill、PImacsを活用し、業種と業務の課題を横断して解決し、お客様のビジネスの高度化を可能にするオファリングメニューとしての整備を進めている。ERPだけにとどまらず、AI、データ&アナリティクス、モビリティなどの先進技術を組み合わせ、今後のオファリングビジネスの中心となることが期待されているProActiveの新しいブランドに期待したい。