先進デジタル社会を実現した韓国 行政手続きが24時間365日可能
約30年前、Windows 95発売を契機に、世界中でインターネットの普及が拡大した。その少し後の1997年7月、アジア各国は自国通貨の大幅な下落が伝播するIMF危機に直面。韓国もこの波に飲み込まれ、一時的に経済が危機的な状況に陥った。
当時のキム・デジュン(金大中)大統領は、ビル・ゲイツ氏や孫正義氏らと会談を重ね、「国家産業を製造業からITに転換する」ことを決断。韓国はIT立国を目指すことを宣言した。ペンタセキュリティが起業したのも、ちょうどこの頃だった。当時、韓国で暗号技術を専攻していた大学院生ら6人が、将来のセキュリティ需要を見越して同社を立ち上げたのだ。
IT立国宣言以降、同国では電子政府法が制定され、IT産業育成に向けて政府が積極的に各種施策を進めていった。IT人材育成、ITスタートアップ支援、海外事業展開、製品・技術開発、産学連携など……。そうして2010年には、国連が選ぶ電子政府ランキングで1位になるまで躍進した。
デジタル化が進んでいる韓国。その例として挙げられるのが、「住民登録番号」だ。日本でいうところのマイナンバーに相当する。国民は皆、生まれると番号が付与され、17歳になると指紋登録と同時に、住民カードが交付される。この住民登録番号が個人のIDとなり、携帯番号、クレジットカード、出入国履歴など、あらゆる情報に紐付けられる。
住民はどの病院でも、住民登録番号IDから過去の診察や処方の履歴が参照できるため、健康保険証や診察券は不要だ。また、「現金領収書発行制度」という制度があり、現金決済した場合には、店舗が消費者に代わり国税庁に通知することで、消費者の年末調整に自動で計上される仕組みになっている。加えて、行政のあらゆる手続きが24時間365日オンラインで可能だ。
「『ここまでやるのか』という疑問もあるかもしれませんが、現状ではメリットのほうが上回っているため、利用者側の理解を得られています。ここでいうメリットには、デジタル化による効率アップはもちろんのこと、税金の公平性や、過去の履歴が参照できるなどの透明性も挙げられます」(美濃部氏)