エンジニアがより価値を生み出せる環境づくりを支援する
APIマネジメント市場を見渡すと大手競合がひしめく中、Kongの優位性はどこにあるのか。有泉氏に尋ねると「軽量さ、エンジニアの負荷の少なさ」を挙げた。
たとえば、Javaをベースとしている他社サービスと比較したとき、Kongはnginxをベースにしているため非常に軽量であり、ファイルサイズも約50MBしかないという。また、ゲート遅延やスループットの低下がほとんどなく、性能面でも競合他社を引き離しているとして、有泉氏は「管理するAPIが少なければ、大きな差は生じないかもしれない。しかし、金融機関など、APIを多く使用する企業・組織には大きなメリットとなる」と話す。
さらに、OSSとして開発者に支えられてきたKongには、1,000を超えるカスタムプラグインが用意されている。たとえば、認証・認可にBasic認証やKey認証、レート制御など、新たにゼロから開発する必要がなくなるため、開発リソースを節約することが可能だ。なお、プラグインはKongが提供するものだけでなく、コミュニティによるプラグインも利用できるという。
たとえば、Kongによる「AI Gateway」は、生成AIを安全に使用したいというニーズに応えるプラグインで、ChatGPTなどのLLMと接続するときに利用できる。複数のAIモデルを利用するときのトラフィック管理を容易にするもので、タスクごとに最適な割り当てが可能だ。また、プロンプト入力による情報漏洩を防止するため、データの制御や保護、マスキングで予防できる。さらに監視ポリシーを適用することでガバナンス強化にもつながるという。他にも、プロンプト送信時に類似の会話履歴があった際、トークン使用量を節約するために同じ情報を返すといったことも可能だ。
技術者不足が叫ばれている中、多くの企業が開発リソースを認証認可やログ収集、監視など、API上の非機能要件に割いてしまっている状況がある。「開発者がより価値を生み出せる業務にリソースを使えれば、売り上げの向上にもつながっていく」と有泉氏。だからこそ、APIの管理はツールに任せながら、新たな価値を生み出す方向にシフトしていく必要があると説く。
特に、APIマネジメントが普及している欧米では内製化が主流であり、ビジネスとITが密接に結びつく中で、新しいサービスやイノベーションが早期に生み出される構造がある。APIの急増という課題を前にしている今、これを外部に委託して解決するだけでなく、内製化の推進、ひいてはDXの実現につなげるための機会にしてほしいとも話す。
最後に有泉氏は「(日本企業を元気にするためにこそ)エンジニアだけでなく、経営層にも情報を発信することで、まずは市場形成に取り組んでいく」と力強く語った。日本においてAPIマネジメントは定着していないものの、いずれ当たり前となるのかもしれない。Kongは今まさにそのスタートラインに立っている。