熾烈な競争が続く「AI/アナリティクス」市場、老舗の米テラデータが年次イベントで示した独自性
「Possible 2024: Los Angeles」現地レポート

米テラデータ(Teradata)は、2024年9月の「Possible 2024: London」に続き、現地時間2024年10月7日から10日にかけてグローバル年次カンファレンス「Possible 2024: Los Angeles」を開催した。本稿では、主に8日朝の基調講演の内容から、同社の製品戦略を考察する。
戦略の2本柱「クラウドファースト」と「パートナーファースト」
データウェアハウス(DWH)の老舗として知られるテラデータ。1979年の創業以来、長く企業のデータ活用をサポートするリーダーとしての役割を果たしてきた。しかし、ビッグデータから現在のAIブームに至る過程で、新規参入のベンダーが加わると競争環境は激化。2019年には、ハードウェアの売り切り型ビジネスから、ソフトウェアのサブスクリプションビジネスへと、成長に向けて大きな戦略転換を決断した。
イベント2日目にあたる、10月8日朝の基調講演に登壇したスティーブ・マクミラン氏(社長兼CEO)は、2020年6月の現職就任以来、同社がソフトウェアの会社として「クラウドファースト」と「パートナーファースト」の2つを柱に変革を続けてきた過去4年間を振り返った。

現在、同社の主力製品はTeradata Vantage(以降、Vantage)。Vantageは、企業のコンピューティング環境がパブリッククラウドでも、プライベートクラウドでも、オンプレミスでも、あるいはハイブリッドクラウドやマルチクラウドでも、すべてのデータ資産を活用できるように設計されていることが特徴だ。パブリッククラウドの場合は、AWSやGoogle Cloud、Microsoft Azureに対応している。今回のイベントで、マクミラン氏をはじめとした幹部全員が強調していたのは、「オープンで、接続性の高いデータプラットフォーム」を提供することだ。
この背景には、企業のデータ活用ニーズの多様化がある。企業内のシステム環境は複雑化しており、データは多くのシステムに散在。構造化データだけでなく、テキストや音声、動画などの非構造化データを利用したいとの需要も高まっている。たとえば、テラデータの主要顧客である金融機関の場合、ミッションクリティカルなワークロードと一般的なワークロードを分けて処理したいニーズもあるという。また、企業内でデータに関わる人たちが使いたいツールや手法も多岐にわたる。だからこそ、同社はVantageを“あらゆるデータニーズ”に対応できるようなオプション機能を提供するプラットフォームにしたいと考えた。
そこで、現在のテラデータが特に注力している、Vantageの機能が以下の2つである。
- ClearScape Analytics:Vantageプラットフォームに組み込まれたアナリティクスエンジンであり、AI/MLのライフサイクルをエンドツーエンドで管理する仕組みを提供する
- Query Grid:データ統合機能を提供するデータファブリック。クラウドとオンプレミス環境に分かれている場合、あるいは異なるパブリッククラウド環境に分かれている場合でも、必要なデータへとアクセスするための仕組みを提供する
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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