クラウドファーストだが、オンプレミスへの投資は継続
前述した、2つの事例が示唆するのは、オンプレミス環境でアプリケーションを運用している日本の金融機関でも、同様の取り組みが可能ということだ。マッキンタイア氏は、「両社ともにオンプレミス環境に留まり続けることは考えていない。Teradataを利用しながら、クラウド移行する計画を視野に入れている」と語る。さらに、現行のオンプレミス環境のまま生成AIに取り組んだとき、途中でクラウド環境に移行したとしても、最初からやり直す必要のない点もテラデータの強みだ。クラウドに移行しても、これまでのAIへの投資が無駄にならないような柔軟性をテラデータは提供できる。
こうした柔軟性重視の戦略は、企業規模が大きくなるほど、クラウドへの移行に何年もの歳月がかかってしまうことを考慮してのことだ。特に米国の金融機関には、保有しているデータ資産の規模があまりにも膨大なため、一度はクラウドに移行したものの、運用コストの問題からオンプレミスに回帰した顧客もいるほどだ。もちろん、オンプレミス環境を維持したいと考えている場合は、そのままでも構わない。クラウド環境で利用する場合と同じソフトウェアを提供するよう、オンプレミスへの投資を継続するとテラデータは明言している。
とはいえ、戦略の柱の1つは「クラウドファースト」だ。日本でも、クラウドへの移行に意欲的な顧客が出てきた。その1つ、常陽銀行は、全行の顧客情報系システムのアナリティクス基盤にTeradata VantageCloud on AzureおよびTeradata QueryGridの採用を決定。すべてのデータ環境を一度にクラウドに移行するのではなく、顧客データから移行していく。Query Gridを採用したことで、社内に散在する他のデータへのアクセスも確保したことにもなる。
テラデータはアナリティクス分野のリーダーとして革新を続けてきたが、ClearScape Analyticsの発表は2022年8月と、比較的最近のことだ。マッキンタイア氏はこの機能強化を「顧客のクラウド移行への意欲を踏まえたものであると同時に、データ活用のニーズを考慮してのことである」と強調していた。
これからのAI活用に向けて、基調講演でのマクミラン氏は、AIソリューションの提供において「信頼できること」「倫理的であること」「持続可能であること」の3つを重視すると述べると、「テラデータの仕事は、データアナリティクスやAI/MLをすべての人にとって摩擦のないものにすることだ」と訴える。また、2本柱のもう1つ、「パートナーファースト」にも注力していき、クラウドサービスプロバイダーだけでなく、グローバルおよび特定市場で活動するSIerやソフトウェアベンダーとのパートナーシップも引き続き強化するとのことだ。