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情報漏えい絶えない日本、2024年を「転機の年」にできるか? 20年前に同じ経験をした韓国は今……

「データ暗号化」が我が国でも拡大中 システム刷新やセキュリティ見直しの今、企業の判断が試される

“情報漏えい先進国”では新たな課題が……韓国が打ち出した「MLS」アプローチとは?

 一方、韓国も近年、情報漏えい対策にまつわる新たな課題に直面していると陳氏。それは、これまでの電子政府をいわゆる行政機関から一段と飛躍させ、新たな価値を生み出す「デジタルプラットフォーム政府」へと転換を進めているからだと話す。

 同国では2000年代から、デジタル技術を駆使して行政の効率化を図るための取り組みを進めた結果、2010年には国連の電子政府ランキングで1位になるほど社会全般にデジタル化が浸透した。近年では、AIとデータ中心時代の新たなモデルとして、すべてのデータが融合されたデジタルプラットフォーム上で国民、民間企業、公共機関、そして政府がともに社会問題を解決し、時代が求める価値を創出する政府を目指しているという。これが、デジタルプラットフォーム政府の概念である。

 「これまでは、行政の業務効率化を目的としたデジタル化やデータ活用に取り組んできました。現在ではさらにもう一歩進んで、国民一人ひとりを中心に据えた行政サービスの革新を目指しています。その中で、すべての行政機関のシステムとデータが連結され、民間と公共が協力して社会問題に取り組み、これまでの公共サービスの概念を刷新する『デジタルプラットフォーム政府』という新しいコンセプトを打ち出しているのです。この政府では、データに基づいた客観的な判断を下したうえで、企業は公開されたデータを自由に活用し、様々なサービスを生み出すことができます」(陳氏)

 このデジタルプラットフォーム政府が実現すれば、韓国国民はより多くのメリットを享受できるようになると期待されているが、その一方で、実現に向けては国民の個人情報をより多く収集し、活用するために公開する必要がある。こうした理由から、サイバー攻撃の攻撃点となり得るポイント、いわゆる「アタックサーフェス」の増加が予想されている。

 この課題を克服するためには、より厳格な情報漏えい対策が必要となる。そこで現在、同国が取り入れているのが、米国や英国の行政機関でも取り入れられている「マルチレベルセキュリティ(MLS)」と呼ばれるリスクベースアプローチだ。政府が管理する情報を、その機密性や重要性のレベルに応じてカテゴリ化し、それぞれのレベルに応じた管理と利用方針に基づいて情報保護対策を適用するというものである。

 「このアプローチによって、限られた人的リソースを適切に配分できるようになるとともに、機密性のレベルが低いと評価された情報はオープン化することが可能となります。すると、重要な情報を保護しつつも、これまで過剰に守られていた情報の公開が進み、データ活用などがより活発になるのではと期待されています」(陳氏)

 さらに韓国では、デジタルプラットフォーム政府の実現に向け、ユーザー認証システムのさらなる強化として生体認証の導入が各所で進んでいる。これにともない、ユーザーの指紋や顔、目の虹彩模様などといった様々なバイオメトリクス情報をセキュアに管理するニーズも高まってきている。同国では、時代の移り変わりとともにデータ利活用の方法と範囲、そしてサイバー脅威のリスクは変化するものの、データそのものを守る考え方は一貫していると陳氏。やはり、これまでと同じくデータの暗号化技術が極めて重要視されていることが、その証左であろう。

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日本でもグローバル企業を中心に暗号化が浸透中、背景にシステム刷新や法規制への対応など

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この記事の著者

吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)

早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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