MESの標準11機能が抱える課題とは?
前年のシンポジウムで提起された問題(下記リンク記事参照)とは、いわゆる「MESの標準11機能」がわかりにくいことだ。最初に登壇したダッソー・システムズ 廣谷満氏がメーカー勤務時代に困ったのが、MES(Manufacturing Execution System)とは何かがよくわからないまま、仕事に取り組まなくてはならなかったことだ。廣谷氏は「当時から今までMESには教科書がない状態が続いている。ERPも最初は似た状態だったが、その後は体系化が進み、多くのコンサルタントが導入方法を学んだ。MESはまだその段階に至っていない」と指摘した。そして、「今は外資系ベンダーに勤務しているが、外資のやり方を押し付けるつもりはない。日本の製造業をスマートにしたいと考え、MES導入促進ストラテジックプロジェクトに参加した」と述べた。
廣谷氏と共に参加し、プロジェクトリーダーを務めたアビームコンサルティングの阿部洋平氏は、エンジニアリング協会でMESを取り上げたのは、仮説として「スマート工場とはMESを活用している工場である」と提唱してきたためと話す。具体的には以下の4点がその仮説になる。
- 「次世代スマート工場」は工場のレベルの賢さを実現する。
- 工程レベルのスマートを積み上げても、全体でのスマートは生まれない。
- 将来的には「中央管制システム」が登場し、工場全体のスマートさを確立する。
- 中央管制システムはMESの存在を前提としている。
プロジェクトもこの仮説を前提に進めてきた。エンジニアリング協会が描くビジョンを見ると、MESは中心に位置し、次世代スマート工場の中央管制塔の役割を担うとわかる。
スマート工場研究会は、この他にもMESの現場調査、普及、理解促進など、多くの活動に取り組んできた。冒頭で述べた通り、日本の製造業にとって、MESの11機能はわかりにくいものだ。製品ベンダーにとって、ユーザー企業がMESの11機能を基に作成したRFPから提案書を作成しなければならないことは頭の痛い課題だ。また、ERPと比べると、MESの場合、十分な知識を持った導入コンサルタントが少ない。これではプロジェクト中にトラブルが発生するリスクが生じてしまう。
実はMESの11機能以外にも参考にできるフレームワークが他にもある。ISAの「ISA-95」、製造科学技術センターの「Open MES」、AMR Researchの「3層モデル」などだが、国内ではMESと言えば、「MESの11機能」が真っ先に連想される。この現状を解決したいと研究会では考えた。