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1,400超のショップ支えるecforceをTiDB Cloudに移行 一度OSS版断念もなぜ導入?

運用コスト削減、スケーラビリティ向上のポイントは

 統合コマースプラットフォーム「ecforce」は、1,400ショップ以上に導入されている。その傍ら、急激な事業拡大にともない、ショップ情報を管理するリソースや運用コストの増加が課題となっていた。2024年11月に開催されたアーキテクチャConference 2024では、ecforceを開発・提供するSUPER STUDIOが登壇。「NewSQLを用いたDB分離のマルチテナントアーキテクチャ〜ecforce編〜」と題したセッションでは、TiDBの特徴を踏まえながら、ecforceが抱えている課題をどのように解決したのか。また、TiDB Cloudを選択した理由や移行状況などが解説された。

「ecforce」のシンプルなアーキテクチャ、見えてきた課題とは

 SUPER STUDIOの設立は2014年。メインプロダクトである「ecforce」は、2017年のプロダクトローンチからしばらく、ECショップを開設する顧客をサポートするためのカートシステムを展開してきた。

 このカートシステムを中核に据えながらも、直近では「コマースDX」の実現に向け、マーケティングや販売チャネルの強化、アジャイルなデータ活用を可能にする統合プラットフォームとしてプロダクトを進化させている。そう語るのは、同社 プロダクトエンジニアリング本部/SREグループ グループマネージャを務める田幸久志氏だ。

株式会社SUPER STUDIO プロダクトエンジニアリング本部/SREグループ グループマネージャ 田幸久志氏
株式会社SUPER STUDIO プロダクトエンジニアリング本部/SREグループ グループマネージャ 田幸久志氏

 Web上の自動接客システムやEFO(入力フォーム最適化)、パーソナライズ機能など、従来のEC運営で必要とされてきたアプリケーションはもちろん、実店舗とのデータ連携や店舗予約・顧客管理が可能なプロダクトなどに加えて、データ活用関連のソリューションにも注力。複数のチャネルを跨いだデータの可視化・分析を可能にする「ecforce bi」や、顧客セグメントごとにパーソナライズされたCRM施策を打てる「ecforce ma」などのプロダクトも提供を開始したという。

 こうしたecforceの進化を支えているのは、シンプルなアーキテクチャだ。Webサーバーとバッチサーバーが根幹を担い、それぞれがデータベースにアクセスする構成を採用。Amazon EC2インスタンスはWebサーバー約1,000台、バッチサーバー約450台の計1,500台ほどが稼働している。

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 データベースは、Amazon RDS for MySQLとAmazon Aurora MySQLを併用し、1,400以上のショップの情報を350以上のデータベースクラスタで管理しているという。田幸氏によると、ecforceはショップごとにデータベース・インスタンスが割り当てられる、いわゆる「マルチインスタンス」と、1つのデータベース・インスタンスに複数のショップが紐づいている「シングルインスタンス/マルチデータベース」を併用する形で運用されている。

 MySQLを利用しているため、レコード単位での分離を実現する“ローレベル・セキュリティ(Row Level Security)”機能が担保されておらず、使い方としても想定されていない「シングルインスタンス/シングルデータベース」の構成は適さないともいう。一般的にマルチテナントのデータベースアーキテクチャは、下図のように大別できる。いずれもリレーショナルデータベースの特性から、自由な拡張は難しい。

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 そのため、ecforceはショップごとに論理データベースを分けている状況だ。ecforceはサービスの特性上ショップごとに使い方が異なるため、ショップごとにデータベースの使い方も変わる。たとえば、データベースのレスポンスが悪くなった際に、インデックスによって解決しようとすることは一般的な対策の1つだが、「すべてのショップに適用した際、こちらのショップはレスポンスが速くなる一方、別のショップではむしろ遅くなることがあり得ます。そのため、データベースをショップごとに分離しておくことも我々にとっては必要です」と田幸氏。さらにリソースの増加やデータベース・インスタンス管理の煩雑化といった課題も生じているという。

 データベース・インスタンスは300以上存在し、メンテナンスや障害対応に手間がかかるだけでなく、データベースのスケールアップ時にはサービス停止も必要となる。加えて、データ活用を進めていく際にはショップ単位ではなく、ecforce全体で横断的なデータ分析を実現したい。とはいえ、すべてのデータベース・インスタンスにリクエストを投げ、集計することは現実的でないだろう。

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 つまり、ダウンタイムなしでのスケールアップやコスト削減、横断的なデータ活用に取り組みたいと考えても、現状のアーキテクチャが機能実装を阻んでしまっているような状況だ。

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コミュニティ版に断念も「TiDB Cloud」を検討へ、その魅力は

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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