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川崎重工業がデジタル活用で目指す未来創造──産業界一丸での“IX”で成し遂げるイノベーションとは

インテリジェンスからイノベーションへ、産業変革をオールジャパンで

 川崎重工業は、「従業員」「事業」「顧客」の3つの柱でDX目標を設定している。まず、従業員のDXでは、組織文化の醸成や事業オペレーション、ものづくりのデジタル変革を目指している。次に、顧客に向けたDXの取り組みとしては、「これまでに培った技術を顧客に提供し、さらに社会に還元していくことが、グループビジョン2030における究極の目標である」と中谷氏は重ねて説明した。

 そして事業については、「日本のみならず、世界全体の社会発展や未来創造という目標を、川崎重工業の力だけで達成するのは容易ではない」と中谷氏。そのため、デジタル事業をともに推進するビジネスパートナーや、事業運営を支えるサプライチェーンパートナー、テクノロジーパートナーの存在が成功の鍵を握るとした。

 「製造業の分野では業界をリードする存在だと言えるかもしれませんが、デジタル技術を活用したビジネスに関しては、まだまだ経験が不足しています。そこで、デジタル事業戦略とデジタル技術戦略においては、ガートナーの知見を活用しながらデジタルプラットフォームの構築を進めています」(中谷氏)

 川崎重工業が2030年に目指すのは、鉄道車両、輸送ロボット、ヒューマノイドロボット、ドローンなどの製品・テクノロジーが社会のあらゆる場面で活躍し、互いに連携して活動することで、人々がより快適で安全な生活を送れる未来社会の実現である。そのためには、すべてのテクノロジーが協調して活動するために突破すべき様々な課題を解決する必要がある。データのプライバシーやサイバー攻撃への対策に加え、人体に害を及ぼさないロボット制御技術の開発も求められる。また、人の尊厳を守るための基準作りも重要だ。

 こうした課題の解決を模索する中で、人類はさらなる未知の課題と遭遇するだろう。そして、未知の課題を解決するためには、新たな知識と創造力が求められる。多様な業界の多様な製品が連携し、さらに人々の生活に密着した情報が得られるようになれば、社会にとってプラスに働く様々な相乗効果が期待できると中谷氏は述べた。

 「鉄道業界や運送業界だけでなく、ロボットや水素流通など多くの業界・分野で製品間の連携が進んでいけば、収集できるデータはさらに増えていきます。このデータをAIなどの先進技術で高度に分析することで、これまで人の力だけでは見出せなかった新たな知識、つまりインテリジェンスを生み出すことができるのです」(中谷氏)

 先進デジタル技術を集約し、新たな知見を生み出す仕組みとして、同社はデジタルプラットフォームの構築に注力している。テクノロジーからもたらされるインテリジェンスを活用し、日本の産業に新たな変革をもたらすためだ。

 中谷氏は、「日本産業界の強さを世界に示すため、オールジャパンでこの取り組みを進めるべきだと考えています。その中で、当社は言葉だけでなく行動を伴い、実現に向けたリーダーシップを発揮していきたいです」と語り、2024年11月6日に様々な企業とコラボレーションし、イノベーション/インキュベーションを世界に発信する場として「CO-CREATION PARK-KAWARUBA(カワルバ)」を東京羽田のイノベーションシティに開設することを発表した(講演時は2024年10月29日)。

 川崎重工業だけでは日本産業全体の変革は難しいが、複数の企業がデジタル変革を伴って次々と集まり、産業界全体として大きな融合が実現すれば、これまで夢のように思われていた体験が現実のものになるというのが、同社の考えだ。中谷氏は最後に次のようにコメントし、産業界の連携を呼びかけた。

 「インテリジェンスからイノベーション、インキュベーションへとつながる一連の変革の流れを、『インテリジェンストランスフォーメーション(IX)』と呼びたいと思います。ここにお集まりの各分野のDXリーダーの皆様、私も含め、互いに協力しながら産業変革を実現していきましょう」(中谷氏)

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

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