「FP&A」を構成する3大原則から考える
最初に登壇したのは、日本CFO協会の「FP&Aプログラム運営委員会」 委員長や米国管理会計士協会(IMA)の日本支部Presidentを務める石橋善一郎氏だ。今、日本企業では、グローバル企業で20年ほど前から普及している“FP&A組織”を導入しようという動きが進んでいるといい、FP&Aのエッセンスを紹介した。
まず、FP&Aプロセスには「12の原則」があり、3つに大別される(便宜上、本稿ではこの3つを「大原則」と呼ぶ)という。
大原則の1つ目は「経営管理プロセス」。これは計画プロセスと統制プロセスから成っている。前者のアウトプットの代表例が年度予算で、統制プロセスはそれをどのように実行するかというものだ。
「計画プロセス(年度予算)を考える上では、月次で12〜18ヵ月先を意識しながら予算を都度更新するローリング予測が重要だ」と石橋氏は語る。つまり、日本企業では一旦作成した年度予算は更新しないケースが多いが、FP&Aにおける経営管理プロセスでは、予算という目標に対して実績がズレたら、月次で経営資源を再配分しなければならない。言い換えれば、PDCAサイクルを予算作成にも適用しなくてはならないと同氏は語る。
大原則の2つ目は「マネジメントコントロールシステム」だ。組織構成員に目標を与え、そこに向かって仕事をしてもらうためのシステムを構築することの重要性が説かれた。
石橋氏によれば、このマネジメントコントロールシステムの中で最も重要なのは、組織構成員それぞれの業績を評価し、報酬を与えることだという。これもPDCAサイクルの一種であり、大原則1つ目の「経営管理プロセス」のPDCAサイクルと共に取り組まなくてはならないものだ。
大原則の3つ目は「ドライバーと主要業績指標(KPI)」だ。ある投資の成果が出るのが長期的になってしまう場合、1年間という期間損益では利益が減少してしまうため、その投資の実行を躊躇してしまいかねない。そのため、期間損益にとらわれずに、事業部が将来生み出すキャッシュフローを長期的に増大させるための投資活動を行う必要がある。そのための投資意思決定において、PDCAサイクルを適用することの大切さを石橋氏は説いた。