以下、4名のCIO/CISO職域の方にコメントをいただきました(氏名・五十音順)。
NEC 小玉浩氏、日立製作所 貫井清一郎氏、富士通 福田譲氏、NTT 横浜信一氏
AIイノベーションのゲームチェンジャーになる(NEC 小玉浩氏)
2024年を振り返って
2024年は、NECの企業変革の本格的な取り組みの中で、社内DXに関する多くの成果が出た年となりました。
人の力を引き出す働き方のDXでは、生体認証によるデジタルIDとWeb3・分散ID技術を用いた社員証のデジタル化により、人・サービス・データをつないだ新しい体験による価値創出が始まりました。入退場・決済・自販機・複合機・ロッカーなど、オフィス生活のあらゆる接点を顔認証で利用可能にし、モバイルアプリをはじめとするOne Team化やコラボレーションを促進する環境を進化させるなど、エクスペリエンスが劇的に変わっています。
経営・マネジメント変革に向けた基幹業務のDXでは、経営コックピットや約90種のダッシュボードによって経営層から社員まで同じファクトに向き合い、未来志向のアクションにつなげ、データを起点にビジネススピードを最大化するデータドリブン経営が進んでいます。サイバー空間の脅威とリスクや社内IT状況など、あらゆる領域の社内データを全社にオープンにしています。
ITの力を最大化し運用を高度化する取り組みも、リソースをより付加価値の高い領域へシフトすることを目的に、様々なシステムをデジタルで一元的に管理・自動化する運用統合が進んでいます。ITサービスデスクだけでなく、非IT領域である法務やHRでもEnd to Endで業務プロセスのデジタル化・自動化・コミュニケーションの一元化を進めています。
生成AI活用もグループ全体で5.4万人強が利用し、230超のシステムとの連携も進み、当たり前のものとなっています。さらにAIカルチャーを加速するため、活用コンテストなども行っています。
積極的なチャレンジの結果、7期連続で利益計画を達成するなどNEC自身が大きく変革しています。多くのお客様から関心をいただき、NECの活きたナレッジを参考にしたいとお問合せをいただいています。そして、NEC社員が働くリアルな現場をご覧いただく本社「リファレンスオフィス」に多数お越しいただいています。
日本電気(NEC)
執行役 Corporate EVP 兼 CIO 兼 コーポレート IT・デジタル部門長
小玉浩氏
長年にわたり企業の情報システム開発に従事し、多数の大型案件のプロジェクトマネジメントを実践。その後、企業向けビジネス部門責任者としてエンタープライズビジネスユニット長、デジタルビジネスプラットフォームユニット長を経て、現職。全社横断の社内デジタル推進の責任者として、これまでの経験を活かし、経営・業務・IT一体のコーポレート・トランスフォーメーションをリード。
2025年の展望
不透明・不確実な社会環境の中、テクノロジーの進化による影響がこれまでより大きくなると考えています。社会価値創造型企業であるNECは、テクノロジーを「正しく」使い社会にとって良い価値を生み出していきます。
NECは「AI First」を掲げ、2025年を今後の10年を決める非常に重要な年と位置づけ、AIイノベーションにおける世界的なゲームチェンジャーとなっていきます。社内外の多様なナレッジの取り込み、システムへの組み込みなどによって徹底的に活用できる仕組みを構築。さらにはAIエージェントを使いこなし、Quick Winで飛躍的な効率化・高度化を実現していきます。
NECにとって、2025中期経営計画の最終年という重要な年でもあります。自社をゼロ番目の顧客とする「クライアントゼロ」戦略のもと、自社の成果を「BluStellar」に組み込み、パートナー様、お客様、教育機関の皆様との共創を通じて社会価値の拡大に貢献していきます。
生成AIで業務効率化を実感、IT構造改革にも本腰(日立製作所 貫井清一郎氏)
2024年を振り返って
日立は、“One Hitachi”で、グローバルに社会イノベーション事業を拡大する成長戦略を取っています。ITにおいても、事業部間のシナジー創出に向けた変革のため、標準化されたIT共通基盤や、データ利活用を加速するインフラ・ツールの整備を進めてきました。
2024年は、全社グローバル共通のERP、CRM基盤の構築と日立グループへの導入を推進し、経営層がグローバルな情報をいち早く集め、可視化・分析できる環境を整備し、経営判断のスピードや質の向上に貢献しました。また、経営ダッシュボードや、営業現場の受注戦略支援など、AIや各種分析技術を活用して将来予測を可能とする、新たなDXソリューションを日立グループ内に提供しました。
さらに、従業員が安心・安全に使える生成AI環境の構築にも注力しました。翻訳や資料・議事録作成など、共通業務に特化した機能を有する生成AIサービスを日立グループ内に提供し、業務効率化の成果が目に見えるようになってきました。
日立製作所
執行役常務 CIO兼ITデジタル統括本部長
貫井清一郎氏
1988年アーサーアンダーセンアンドカンパニー(現アクセンチュア)に入社。以降、経営戦略・IT・業務改革などのコンサルタント業務に従事。2010年同社 執行役員 通信・メディア・ハイテク産業統括本部長。2015年日立製作所に入社し、2021年より執行役常務CIO兼ITデジタル統括本部長に就任。CIOとして、日立グループグローバル全体におけるIT戦略の立案と実行を推進。
2025年の展望
2025年も、全社共通のIT基盤の構築・進化を引き続き推進し、タイムリーかつ緻密な経営判断の実現をサポートしたいと考えています。DXにおいては、データが重要となりますので、データカバレッジの拡大、データの品質向上も進めていきます。
また、将来の労働人口の減少に目を向けると、従業員の生産性を向上させるIT技術の適用を進める必要があります。社内におけるデータやツールの共通化により、生成AIなどの優れた新技術を全世界でクイックかつ広範に活用することを可能にしたいと考えています。ITサービスの標準化、セキュリティの強化、DXなどを進めることで、従業員が「便利になった」「気づきが見えるようになった」と実感できる環境を実現していきます。
加えて、定常ITコストの増加を抑制するための、IT構造改革の取り組みも重要なテーマです。ITサービスの標準化・統合集約、クラウドシフトなどを通じて、ITアセットのスリム化にも継続して取り組みます。