ビジュアルIVRとRPAで問い合わせを“民主化”
ヘルプデスク最適化プロジェクトは、社員の会社制度などに関する質問に答えるFAQチャットボットを開発するプロジェクトと並行して進められた。具体的には、2022年1月より外部コンサルタントの支援を受けて問い合わせ導線の整理を行い、2022年10月よりビジュアルIVRとRPAを組み合わせた問い合わせ対応の自動化に取り組んだ。自動化のフェーズでは、ユーザサポート課でプロジェクトを主導した清氏など2人のメンバーに、ビジュアルIVRアプリからの誘導先となる社内イントラ担当部署の2人が加わった。
導線整理は、外部に委託している業務も含めてヘルプデスクにどのような問い合わせが寄せられているのかを整理することから始めた。最も多い問い合わせは、PCやアプリへのログインに関するものだ。
「『PCにログインするためのUSBキーを紛失した・忘れた』『キー認証がうまくいかない』『メールアプリなどが定期的に行うデバイス認証でロックされてしまった』など問い合わせの内容は様々です。一方で、こうした問題を解決するための手順は定型的であり、ある程度決まった手順を踏めばどのユーザーの問題も解決に導けます」(清氏)
問い合わせ件数が多く、業務への影響も大きく、かつ有人によるサポートが不要で定型的な手順で解決できるトラブルについてはRPAを用いて応対を自動化。ユーザーは、ビジュアルIVR内に用意された申請フォームに問い合わせ内容を記入して送信すると、RPAによって自動的にシステム画面が操作され、問題を解消できる仕組みだ。これにより、ユーザーがリアルタイムに問題を自己解決できるフロー構築を実現した。なお、ビジュアルIVRツールは「社内でコンテンツを編集でき、なおかつ簡単に扱えるもの」という要件のもとで選定している。
問い合わせの導線にはシステム担当以外の部署も多く関与する。特にシステムに詳しくない社員が各部署の管轄する問い合わせ対応を担当することもあるため、HTMLなどITの専門知識や画像のサイズなどを意識しなくても扱える必要があった。加えて、「誰でも手軽に扱えるツールなら、情報の更新頻度が上がるだろうとの期待もありました」と清氏は話す。
また、ビジュアルIVRアプリの開発はSIerに委託し、コーポレートカラーを用いてユーザーの導線がシンプルかつ分かりやすいユーザーインタフェース(UI)の設計を心掛けた。
「基本的なフローは以前から利用していたIVRを踏襲しつつ、ユーザーを迷わせないよう手短でわかりやすい言葉を使い、テンポ良く短時間で課題解決に至れるよう画面を設計してもらいました」(北島氏)
トラブルの解決が大きなチャンスに? アプリを使ってもらうための工夫
ビジュアルIVRアプリを活用した新ヘルプデスクの運用は2023年10月より開始し、アプリの利用を促進するために様々な広報活動も行っていった。
まず社内ポータルに告知を掲載し、ビジュアルIVRアプリで何ができるのかを案内。また、ビジュアルIVRアプリに親しみをもってもらうために、多くのユーザーが遭遇するトラブルシチュエーションをマンガにして社内ポータルに掲載した。新入社員向けに配布するPCのセットアップガイドにも新ヘルプデスクの案内を入れたほか、「電話で問い合わせしてきたユーザーに対して、応対の最後に『こんなアプリを作り、こんなメリットがあるので、次回から活用してください』と案内しました」と清氏は振り返る。
電話対応を中心にした従来のヘルプデスクの評判が良かったこともあり、はじめのうちはビジュアルIVRアプリの存在を知りながらも、電話で問い合わせてくるユーザーが多かったという。しかし、全社的に発生したトラブルの解決にビジュアルIVRアプリが大きく役立ったことから認知度と評価が高まり、以降はアプリを使った問い合わせが増えていったという。北島氏は、「今後ある程度アプリの利用率が増えてきたら、ビジュアルIVRアプリで自己解決できるトラブルについては電話で問い合わせが来た場合もそちらに流していくことを検討したいです」と話す。