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マイナビがヘルプデスク対応を年間35%自動化した軌跡:アプリで実現する“問い合わせ民主化”の成果とは

1万人以上のユーザーに8人体制で挑む! 現場課題を“全社課題”に昇格

有人での問い合わせを年間35%自動化

 こうして新しいヘルプデスクの運用を開始したことで、ユーザーの利便性が大きく向上したことに加えて、サポート負担も大幅に軽減されたという。

 たとえば、導入前の1年間のうち、電話での問い合わせ件数は6,562件(月平均547件)だったのに対し、導入後の1年間の入電件数は5,509件(月平均459件)と17%減少した。オペレーターに余裕ができたことで電話対応までの待ち時間が減り、繁忙時間などに電話に出られない放棄呼も1,070件(月平均89件)から801件(月平均67件)と16%減少している。

 ビジュアルIVRによる問い合わせ導線の再構築の効果も見え始めた。PC周りの相談事や各種ツールの使い方など、ユーザサポート課による有人対応が必要な問い合わせの件数は1,706件(月平均142件)から1,119件(月平均93件)となり、35%の問い合わせを応対自動化のフローへ移行。自己解決できる問題は無人で解決できる仕組みを整えたことで、有人での問い合わせ内容も変わってきているのだ。

 「以前は朝の時間帯なら『PCにログインできない』という相談が圧倒的に多かったのですが、最近は『PCの電源が入らない』など、ヒアリングが必要で対応に時間がかかる複雑な問い合わせが大半となりました。本来対応すべき問い合わせにかけるための時間が取れるようになったことで、アプリの効果を感じています」(清氏)

「業務を止めない」ことでITのホスピタリティを

 前述のように、ヘルプデスク最適化はデジタルテクノロジー戦略本部における様々なプロジェクトの一つとして立ち上げたものであり、その背後には各プロジェクトで導入したツールで有用なものは横展開しようとの狙いもある。実際に同プロジェクトで構築したアプリの有効性が確認されたことから、今後はチャットボットFAQプロジェクトでも導線整理のアプローチやビジュアルIVRツールを活用することを検討している。

 一方、ヘルプデスク最適化プロジェクトに関しては今後もやるべきことが多くあると北島氏。現在はヘルプデスク業務のアセスメント調査で「ただちに改善に着手すべき」と提言されたタスクがやっと完了し、成果が見え始めた段階だ。他のタスクについては未着手であり、それらがヘルプデスク業務全体の品質や効率性を大きく左右するという。

 「10年以上前からずっと同じやり方をしてきたヘルプデスク業務をどう改善して発展させていくか、最終的にどのような形にするのがベストか検討し、“グランドデザイン”として戦略的ロードマップの策定や短中長期の目標設定、アクションプランの作成などを進めていきます」(北島氏)

 また、ITツールなどの様々な手段を的確に導入して運用に落とし込む“タスクフォース”と、それらの手段を業務に組み込む導入計画(トレーニング、ドキュメント作成、告知)の作成、および導入後の安定運用/維持管理を行う“オペレーション移行”についても検討が不可欠だ。マイナビは先頃、これらを3本柱にしたヘルプデスク業務の再編に向けてプロジェクトを再始動している。

 北島氏や清氏が最終的なゴールとして描いているものは、すべてのプロセスやツールがシームレスに連携した最適なユーザーサポートの実現だ。それに向けて、今後も社内で動いている他のプロジェクトと連携しながら取り組みを進めていくという。

 「ヘルプデスク最適化をはじめ、今デジタルテクノロジー戦略本部内で動いている全プロジェクトのメンバーの念頭にあるのは『業務を止めない』こと。ユーザーである社員が業務を止めずスムーズに仕事をできる環境を作ることが私たちの役割であり、今後も様々なデジタルツールを駆使してユーザーサポートの最適化に努めていきたいです」(北島氏)

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この記事の著者

名須川 竜太(ナスカワ リュウタ)

編集者・ライター
編集プロダクションを経て、1997年にIDGジャパン入社。Java開発専門誌「月刊JavaWorld」の編集長を務めた後、2005年に「ITアーキテクト」を創刊。システム開発の上流工程やアーキテクチャ設計を担う技術者への情報提供に努める。2009年に「CIO Magazine」編集長に就...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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