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回復基調のPLM市場、PTCはダッソーやシーメンスをどう捉える? 本国幹部に訊いた、最新の市場動向

日本市場に感じる、成長の余地とは

 コロナ禍による落ち込みを経て、PLM(製品ライフサイクル管理)市場は回復基調にあるといわれる中、製造業の設備投資も再び活発化してきた。特に自動運転車の開発が進む現状では、複雑化するプロセスを支えるPLMの需要が北米を中心に高まっている。こうしたグローバル市場の動向や日本市場の成長可能性について、主要プレイヤーの1社であるPTCの最高製品責任者(CPO)ケビン・レン(Kevin Wrenn)氏に話をうかがった。

グローバルで回復するPLM市場、その要因は

 コロナ禍での落ち込みを経て、PLM市場は再び回復基調にある。レン氏によると、グローバルでの市場成長率は、10年前が5〜6%に対して現在は7〜10%にまで伸長しているという。実際に同氏の所属するPTCも好業績を記録しており、2023年には約13%の成長を達成。特に日本市場では、前年比新規年間契約額20%以上の成長を記録するなど、再び日本市場に注目が集まる結果となった。

 「PLM市場が成長を続けている背景には、ユーザーが高度なエンジニアリングを必要とする“複雑な機器”を製造している影響が大きい」(レン氏)  

 PLMは、製品の設計段階から製造、運用、サービスまでのライフサイクル全体を管理し、効率化と透明性を担保。設計データを一元的に管理することで、設計変更やプロセス最適化を迅速に進め、製品開発の効率を大幅に向上させるだけでなく、蓄積されたデータを活用したシミュレーションや予測分析により、品質の向上にも寄与してくれる。もはやPLMは単なる設計や製造の効率化にとどまらず、サービスの高度化や新たな収益モデルの構築を支援する存在、言い換えるならば「製造業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する上で欠かせない存在」となっているのだ。

 また、自動車業界には、EV化に加え車両の機能や性能の多くをハードウェアではなくソフトウェアによって定義・制御する「SDV」のような設計思想、アーキテクチャなど、“クルマのデジタル化”が急速に訪れている。この領域では欧米メーカーだけでなく、BYDなど中国メーカーも急速に成長。このような状況は、PLMの成長率にどのような影響があるのだろうか。  

 レン氏は、「鍵となるのは、企業がどれだけ迅速にDXに取り組むか。この動きは、北米で始まり、その後欧州に広がり、現在は日本や韓国にも普及している。DXの潮流の中、企業はALM、PLM、CAD分野の技術を見直し、新たな方向性を模索している状況だ」と説明する。

 自動車業界をはじめとした製造業には、DXの進展により、設計や製造プロセスの見直しが加速している。設計図面は紙からデジタル形式へ移行し、迅速かつ高品質な成果を実現するためには、完全なデータ化と統合が欠かせない状況だ。これらのデータは設計や製造工程だけでなく、ERPやSCMにも活用できるため、多くの企業にとって喫緊の課題となっている。

 なお、主要自動車メーカーにおける課題は、日本と欧米では変わりがないとして、「トヨタやマツダは、BMWやフォルクスワーゲン(VW)、BYDと同じ市場で競争しており、この競争のプレッシャーは国や地域を問わず共通している。グローバル共通の課題に対応するため、日本市場の成長には大きな期待を抱いている」と話した。

 こうした動きと同時に、レガシーシステムの見直しやプロセス全体の抜本的な再構築も進んでいる。インダストリー4.0を経て5.0の時代に突入した現在、データの重要性はさらに増しており、サステナビリティという新たな要素が加わったことで、その課題はより複雑化した。

 「メーカーは多様な需要に応えるべく、パーソナライズされた製品の提供を目指している。特に産業機器や自動車メーカーでは、ソフトウェアが製品差別化の鍵となりつつあるが、この領域に不慣れな企業も多い。また、サステナビリティや循環性を考慮した設計の必要性に加え、熟練労働者の減少デジタルネイティブ世代の労働力化といった対応も求められている」(レン氏)

次のページ
好業績の主要プレイヤー、ダッソーやシーメンスをどう見るか?

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

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