「どの企業もDXの道半ばだ」──日本市場にこそ成長の機会
前述したように製造業が置かれた状況は、まさに課題が山積しているような状態だろう。このためにもDXを進めることが重要だと訴えるレン氏は、その過程を“3つのフェーズ”で捉えることができるとする。
第1フェーズは「デジタル基盤の確立」。これは“デジタルライフのクリーンアップ”とも呼ぶべき工程だとして、ALM、PLM、MES、ERPなど各システムにどのデータを配置するかを整理し、データ資産を体系的に把握することが求められるという。
第2フェーズでは「システム間のデータ連携」を実現する。ALMとPLMの連携はもちろん、ERPやMESなど重要なシステムとの統合を進めていく。そして第3フェーズでは、エンジニアリング、製造、サービスを含む「バリューチェーン全体にわたるDX」を目指す。たとえば、車両を製造して終わりではなく、インターネットに接続された車両から品質管理のためのフィードバックを得たり、大量のパフォーマンスデータを収集したりすることを実現させる。
とはいえ、PTCの顧客を見たときにもDXは目下進行中であり、3つのフェーズを完遂した企業はまだ存在しない。レン氏は「ユーザーの90%は第1フェーズに留まっている」として、まだまだ成長の余地が残されていると話す。
最後に、レン氏は読者に向けて次のようにコメントを述べた。「DXはもはや選択肢ではなく、必須の事柄だ。その実現にはALM、PLM、ERP、MESなど、どのようなシステムを使用していたとしても『データ基盤の確立』が欠かせない。そして、このデータ基盤があって初めて、AIを効果的に活用できる。市場投入時間の短縮、エンジニアリング時間の改善、品質不良コストの削減、工場での初回合格率の向上……製造業が長年抱えてきた実際の課題をAIで解決できるようになるだろう」