「資金力があるからこそ被害に」日本のサイバーセキュリティの現状
様々な国でサイバーセキュリティの現状を見てきた福森氏。今後は、セキュリティ対策が十分に行き届いていない国への支援に一層力を入れていきたいと語る。アメリカやヨーロッパなどの先進諸国はセキュリティの意識・技術ともに進んでいるが、アフリカなどの発展途上国が多い地域はいまだ“取り残されている状態”とのことだ。
たとえば、先に触れたナイジェリアではなぜ詐欺が多発するのか。理由の1つに、就職先の不足が挙げられる。それゆえに、明日を生き抜くための手段の1つとして詐欺が横行し、なかには大学で高度な学問を修めた人までもが詐欺に手を染めてしまうといった事態が蔓延してしまうのだ。
「悩ましいのは、ナイジェリア1ヵ国で問題を解決しても犯罪は減らないという点です。実際、ナイジェリアで対策に力を入れた後、犯罪者たちは隣国のガーナに移動し、攻撃を行うようになりました。そのため、今度はガーナに行って取り締まりをしなくてはいけません。自国を守るだけでは安全な未来はやってこないことが、この例ではわかります」(福森氏)
日本のサイバーセキュリティの現状については、福森氏はどう見ているのだろうか。同氏は、「日本は資金力があるうえにインフラや就職口なども整っており、世界でも恵まれた環境だ」と語る。ただ、民間企業がサポート詐欺などの被害に遭うといった、資金力があるからこその詐欺被害が生じているという。
また、グローバルで事業を展開をしている大企業に関していえば、海外の子会社が狙われるケースも多いと指摘。日本にある本社では対策ができていても、末端など細かな部分では対策が不十分なのではと現状を分析した。
最後に、福森氏は現在の、そして未来のセキュリティエンジニアに向けて「まずは自分の好きなことから始めてほしい」とメッセージを送る。
「『世の中でこんなニーズがあるからやる』という人は、『自分が好きだからこれをやる』という人にはどうしても勝てないと私は思うんです。自分が好きだと思う分野を突き詰めて世界一になれば、そこには絶対に需要があるはずです」(福森氏)