データプラットフォーム管理
データプラットフォームは、データの収集・加工、保管・蓄積、そして活用のための複数の要素から構成されます(図1)。

これらの要素を実現するために、クラウドやオンプレミスなどで実装するソリューションを適切に組み合わせながら、性能や可用性を維持するためのインフラ面の検討が欠かせません。このプラットフォーム管理は、従来のインフラ運用と同様に、障害監視やリソース管理、パッチ適用などのタスクを行いながら、データのフローや処理負荷を考慮してスケーラビリティを確保していきます。また、データを保管するだけでなく、適切なメタデータ管理や監査ログの活用を通じて、プラットフォーム全体の可観測性を高めることもポイントです。
データエンジニアリング
AIや高度な分析を行うには、様々なソースからデータを収集し、用途に合わせて加工・統合します。データの利用ニーズに従って発生する新しいデータ加工・統合の追加や変更は、ノーコード・ローコード化も進んでいますが、ともすればコードを開発してリリースするアプリケーション開発・保守に似た活動になります。データ統合の方法も変換してからデータを保管・蓄積するETL(Extract,Transform,Load)や変換を後回しにするELT(Extract,Load,Transform)、バッチ処理でなくストリーミングデータをリアルタイムに取り込む仕組みを採用といった要件や環境に基づいたデータ加工・統合の仕組みを選択していくことが求められます。またこれらのデータパイプラインの自動化やパフォーマンス最適化も必要です。
データの品質管理
AIが活用するデータの品質が低ければ、分析結果、モデルやAIからの結果の精度に悪影響が及びます。そのため、データの信頼性を担保する品質指標を定義し、定期的なクレンジングや重複排除、欠損値への対応を行うことが重要です。
具体的には、文字コードの統一や数値フォーマットの整合性を確認するなど、プロセス全体でのデータの品質を維持・改善します。データの変化を観測することも安全性の確保のために重要となります。また、データ品質を継続的にモニタリングし、異常を検知した際には即座にアラートを発行する仕組みを構築することで、問題の早期発見と対処が可能になります。このときにデータプラットフォームからデータ品質までのすべてのレイヤーで俯瞰的に状況が把握できていれば運用の効率化に役立ちます。
セキュリティ・コンプライアンス
データをいかに守るかということは従来からIT運用のなかで大きなテーマでしたが、データ利活用の進展とともに重要度は高まる一方です。まずはデータの取り扱いルールや役割分担を明確化し、権限管理を徹底することでデータへの不正アクセスや誤操作を防止できます。さらに、個人情報や機密情報を取り扱う場合は、プライバシー保護の観点や国内外の法規制への対応が不可欠です。
たとえば、個人情報保護法やGDPRなどに則ったデータマスキングや匿名化の施策を検討する必要があります。データの来歴を管理することで不正な変更の特定や影響把握につながります。監査ログを記録・保管し、アクセス履歴や操作履歴を追跡できる仕組みを整えることで、問題発生時に原因究明をスムーズに行えます。また、セキュリティインシデントからの回復のためのデータ保護も考える必要があります。こうしたセキュリティ対策があってこそ、信頼性の高いAIやデータ利活用が実現できるのです。