「株式証券市場の逆機能」が生んだ停滞の30年
「失われた30年という呼び方を聞いたとき、私は嫌だったんです。何のソリューションも見えない。分析した結果、これは『株式証券市場の逆機能』と呼ぶべきだと思いました」
スズキ教授は1991年以降の日本経済の停滞を鮮やかなグラフで可視化した。売上成長が止まり、従業員給与が横ばいになり、R&D投資が減少した、すなわち総じて付加価値が増加しない一方で、利益と配当だけが増加し続けた現象—これこそが日本経済停滞の本質だという。

特徴的なのは「ワニの口のグラフ」だ。投資家から企業への資金流入(直近で1兆円)と企業から株主への還元(直近で32兆円)の圧倒的な差は、日本企業から資金が一方的に流出している実態を示している。

「皆さんの会社も配当や自社株買いで株主還元を行い、株価やPBRが改善して一見良く見えますが、本当にこれで将来世代に胸を張れますか?」
2000年頃に小泉内閣下で竹中平蔵氏が推進した会計ビッグバンは、「銀行預金として眠っている700兆円を企業に投資すれば経済が回る」という理論だったが、実際には投資ではなく「回収」に走る結果となったと分析した。
さらに資本金の減資や自社株買いによる株主還元も増加しており、東証が推進するPBR1倍ルールが発表された後、1ヵ月もせずに3兆2,500億円の自社株買いが発表され、2024年には17兆円に達したという数字も示された。
