日本市場で息巻く「オブザーバビリティ」の活況はこの先も続くのか?──ガートナー米田氏に将来予測を訊く
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「クラウドネイティブ」や「マイクロサービスアーキテクチャ」といったITインフラのモダナイゼーションを象徴するコンセプトとともに、それらのコンセプトの下で構成された分散システムの状態を観測(observe)するためのアプローチとして、2020年ごろから日本でも導入企業が増えてきた「オブザーバビリティ」。今回は日本市場におけるオブザーバビリティの現状について、代表的なオブザーバビリティベンダーであるDatadogおよびDynatraceの発表内容を振り返りつつ、オブザーバビリティ導入に向けての課題や将来予測をガートナージャパン リサーチ&アドバイザリ部門 シニアディレクター アナリスト 米田英央氏に伺った内容をお伝えしたい。
オブザーバビリティベンダーが日本市場で好調な理由
「日本市場でもクォーター(四半期)ごとに新しい顧客を獲得できており、既に約100社ほどの顧客が当社のサービスを導入している」──3月26日に行われたDynatraceの記者説明会で同社 代表執行役社長 徳永信二氏は日本市場での成長を強調した。欧米の大企業を中心に約4,000社以上の顧客をもつ同社は2021年から日本で本格展開を開始し、現在では伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、NTTデータ、富士通など主要なシステムインテグレーターが同社のインテグレーションパートナーとなって国内企業へのオブザーバビリティプラットフォームの導入を進めている。

急成長中のDynatraceは2021年から日本市場での活動を本格化しており、前半期比で30%の伸びを示している
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また、3月24日に戦略説明会を行ったDatadog Japanもグローバルはもとより、日本市場、特に金融や製造業といったエンタープライズビジネスで継続的な成長を実現していることを明らかにしている。国内における導入企業数は約2,000社、その中にはJR東日本、SBI証券、KDDIといったそれぞれの業界でトップを行く企業も含まれている。

日本市場での存在感を年々高めているDatadog Japanは国内の導入企業数が2,000社を突破。売上も従業員数も拡大している
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両社ともに日本市場におけるオブザーバビリティ製品の導入実績を強調するが、果たしてオブザーバビリティというコンセプトは本当に日本企業に受け入れられているのだろうか。
ガートナージャパンでITインフラストラクチャのオペレーションやアーキテクチャに関連した市場動向調査/分析を担当する米田氏は「コロナ禍以降、日本企業においてもDX推進の流れからITリソースへの依存度が一段と高まり、クラウドネイティブへの移行が進んできた。これにより大企業だけでなく中堅中小企業にもオブザーバビリティへの関心が高まってきている」と話す。大規模分散システムを抱える大企業での普及にとどまらず、中堅中小企業にもオブザーバビリティへの注目度が高まっているという事実は日本企業のDX推進という点から見ても喜ばしいことだといえる。
「パブリッククラウドの普及により、中堅中小企業においても自社インフラをAWSやAzure、Google Cloudで運用するところが増えてきた。その結果、アプリケーションやインフラの可視化/監視ニーズが高まり、オブザーバビリティに注目する企業が増えてきている。また、これまでは監視ツールを導入するには初期コストや専門知識が求められていたが、DatadogなどのSaaS型サービスの登場で中堅中小企業でも導入ハードルが下がったことも普及の理由の一つ」(米田氏)
なお、Datadog Japan プレジデント&カントリーゼネラルマネージャー 日本法人社長 正井拓己氏は2024年における事業の振り返りポイントの一つとして「ミッドマーケット組織(従業員規模1,000~5,000名以下)の成功裡立ち上げ」を挙げており、スクウェア・エニックスやCCCMKホールディングスなどのオブザーバビリティプラットフォーム導入支援を行ったことを明らかにしている。

スクウェア・エニックスはDatadogを導入し、開発/運用/企画の各チームが同じダッシュボードでリアルタイム
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五味明子(ゴミ アキコ)
IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。
Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュース...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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