AIが苦手な「空気作り」はリーダーにしかできない
古森:企業変革という大きな負荷がかかる取り組みは、個人の力を集結させるだけでは実現しえないからです。チームが一体となり、それぞれの得意なことや強みを掛け合わせながら、1+1を2以上にするような環境をつくることがリーダーの役割だと思います。
それに、これまでのリーダーに求められていた目標設定や管理などの役割は、今後生成AIに任せられそうな領域だと思いませんか。数字で表せるものは、AIに任せたほうが正しく実行できる時代が既に来ている。ただ、AIがどんなに正しく情報を提示してくれても、働く人がご機嫌に動けなければ十分に活かされないじゃないですか。だからこそ、チームの環境作り、空気作りがこれからのリーダーに最も求められることだと思います。
井無田: 一般的に外資系企業は個人主義の文化が強いイメージがありますが、古森さんにチームワークを重視する考え方が根付いたのは何故ですか。

古森:私が働いてきた企業では、役職と報酬がイコールではなかったことが大きいかもしれません。あくまでも成果やミッションの大きさによって報酬が決まるので、特にセールス部門の場合は昇進するよりもプレーヤーでいたほうが給料は高い、という現象が起きるくらいでした。それでも私がマネジメントに進んだのは、自分ひとりではできない大きな経験を得たかったからです。
たとえば自分ひとりでどんなに頑張っても、出せるパフォーマンスはせいぜい130%くらいが限界だけれど、仲間で協力して最大のパフォーマンスを発揮できれば、何倍もの成果が出せる。その掛け算を何十、何百と重ねて大きな価値を生み出すことが大企業ならではの戦い方だと思うからこそ、一人ひとりが100%以上の能力を出して協力しあえる環境を作ることが、リーダーのあるべき姿だと思っています。