インフォマティカは5月20日、エージェンティックAIの包括的な戦略および新ソリューションの発表に関する記者説明会を開催した。
同社は日本時間5月14日から16日にかけて年次イベント「Informatica World 2025」を米国で開催した。説明会では、その際に発表された製品やパートナーシップに関するアップデート情報が紹介された。
まず、インフォマティカ AIおよびメタデータ製品管理担当バイスプレジデント Gaurav Pathak(ゴーラフ・パタク)氏が、大きな発表の一つである「CLAIRE Agents」について紹介した。CLAIRE Agentsは、企業のデータマネジメントを強化するために設計された自律型デジタルアシスタントの一連のソリューション。Model Context Protocol(MCP)のサポートを含むオープンスタンダードに基づいて構築されており、同社の提供する「Intelligent Data Management Cloud(IDMC)プラットフォーム」と統合された形で提供されるという。これによりユーザーは、AI推論とプランニングモデルを活用し、データの取り込みやリネージ追跡からデータ品質保証に至るまでのデータ操作を自動化できるとしている。

パタク氏は、CLAIRE Agentsによるデータマネジメントの流れについて下図を用いて説明。まず、ユーザーもしくは他のAIエージェントから「データパイプラインを構築する」「データクオリティのルールを作成する」といったデータマネジメントのタスクが示される。それを受け、CLAIRE Agentsはそのタスクの実行プランを提示。計画に基づいて、生成・編集される成果物の作業セットを作成する「Data Discovery Agent」などのAIエージェントを用いてタスクが提案される。さらに、ソフトウェア開発ライフサイクルにわたっての作業も示してくれるという。

また、CLAIRE Agentsの発表と同時に「CLAIRE Copilot」の一般提供も開始された。CLAIRE Copilotは、Azure OpenAIなどの生成AIモデルを活用し、データ変換および統合パイプラインの生成、文書化などのデータ管理における生成物を自然言語で作成できるもの。IDMC内でのタスクを特定することで、CLAIREがデータ管理に向けたレコメンドを自律的に行うという。
続いて、インフォマティカ 製品管理担当バイスプレジデント Sumeet Kumar Agrawal(スミット・クマール・アグラワル)氏が、CLAIRE Agentsとともに発表された「AI Agent Engineering」について説明した。

アグラワル氏は、AIエージェントに注目が集まる一方で「真の意味で、AIエージェントから価値を生み出している企業はごくわずかだ」と指摘。その要因として以下3つを挙げた。
- 正確性に欠けている:信頼できるAIエージェントには、質の高いデータソースとデータトレーニングが必要
- AIエージェント同士の連携の課題:アプリケーションベンダーはそれぞれ独自のAIエージェントを展開しており、エージェントが普及し始めていることで、AIエージェント同士の連携や、システムとの連携が複雑になってきている
- 規模とガバナンスの課題:大規模にAIを導入しようとすると、拡張性の課題に直面する。また、責任あるAIにはガバナンスと専門知識が必要
インフォマティカは、上記3つの課題を解決できるものとして、AI Agents Engineeringを発表。同サービスは、マルチエージェントAIシステムを構築・接続・管理し、ビジネスアプリケーションをセキュアに、大規模に構成できるようにするもの。AWS、Azure、Databricks、Google Cloud、Microsoft、Salesforce、Snowflakeなどのエコシステム全体で、エージェントをシームレスにオーケストレーションするための統一されたコード不要の環境を提供するという。
アグラワル氏は、同サービスの製品ビジョンについて下図を示して説明した。最下段はセキュリティやポリシーを管理する「AI Gateway」で、その上にAIを管理・運営するための仕組みとなる「Administration&Management」領域がある。その上の「Agent Hub」は、インフォマティカあるいはサードパーティのAIエージェントに対応しており、CLAIRE Agentsもここに網羅されているという。そして一番上にはユーザーエクスペリエンスを向上させる「AI-native User Experience」領域があり、ユーザーのAIネイティブなエージェント構築を支援するとした。

なお、CLAIRE AgentsおよびAI Agent Engineeringは、2025年秋ごろからプレビュー版が展開される予定だという。
最後に、インフォマティカ 戦略的エコシステム担当グローバルバイスプレジデント Rik Tamm-Daniels(リック・タム=ダニエルズ)氏が登壇。同社はInformatica Worldにて、エコシステムパートナーとともに7つの新たな発表を行っており、それぞれ詳細を説明した。

Amazon Web Services(AWS)
Amazon Bedrockで構築されたAIエージェントを開発するための新しいレシピを発表し、Supply Chain ManagementとSimple REACT Agent AIの一般提供を開始した。これらのエージェントレシピを使用することで、ユーザーはマスターデータマネジメント(MDM)、データガバナンス、カタログといったインフォマティカのサービスや、AWS、Oracle、Salesforceなどのサービス全体で自然言語クエリを処理できるとした。
さらにインフォマティカは、Amazon Redshift用のSQL ELTとAmazon SageMaker Lakehouse用の新しいコネクタなどを追加したことも発表。加えて、AWS パートナーを評価する制度「AWS 生成 AI コンピテンシー」も取得したという。
Databricks
インフォマティカはDatabricksとパートナーシップを拡大し、データモダナイゼーションのためのプログラム「CLAIRE Modernization Agents」を発表した。これは、オンプレミスのHadoopベースのデータレイクからIDMCとDatabricks Data Intelligence Platformへの移行を支援するものだとした。
Microsoft
Microsoftとも戦略的パートナーシップを拡大し、AIを活用した統合ソリューションを提供すると発表した。具体的には、インフォマティカのIDMCプラットフォームのなかで、Microsoft FabricやMicrosoft Azureなどの主要サービスを利用できるようになるとしている。
Oralce
2025年後半に、インフォマティカのMDM SaaSがOracle Cloud Infrastructure(OCI)上でネイティブに利用可能になることを明らかにした。
Salesforce
Salesforceとのパートナーシップを拡大し、インフォマティカのIDMCプラットフォームと、SalesforceのAgentforceを統合する計画を発表した。インフォマティカのMDM機能によって企業システムの顧客データを統合し、データ品質の確保を支援するという。Informatica MDM SaaSはこれらを活用し、Agentforceで構築されたAIエージェントを強化。BtoCおよびBtoB環境における営業およびサービスのユースケースをサポートするとしている。
NVIDIA
IDMCプラットフォームをNVIDIA AI Enterpriseと統合することを発表。NVIDIA AI Enterpriseは、NVIDIAの業界固有の推論モデルを活用し、本番環境グレードのAIエージェントを構築するための方法を提供するという。
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