柔軟できめ細やかなゼロトラストによるシャドーAI課題の解決
「柔軟できめ細やかなゼロトラスト」は、シャドーAIの課題を効果的に解決します。全世界の企業従業員の72%が承認されていない生成AIツールを使用している現状に対し、従来のセキュリティアプローチは制限的すぎる(正当なビジネス価値をブロック)か、寛容すぎる(制御されていないリスクを許可)かのいずれかで失敗します。
企業のセキュリティ対策が業務効率を妨げると、従業員は必然的に不満を抱きます。最近の調査では、技術チームがVPN設定で最大の課題として挙げたのは劣悪なユーザーエクスペリエンスでした。組織の半数以上がVPNの脆弱性によるセキュリティインシデントを過去1年間に経験していたにもかかわらず、ユーザーエクスペリエンスはセキュリティよりも深刻な問題と捉えられていたのです。ユーザーがセキュリティ対策を業務の障壁と感じると、それを迂回する方法を模索し、意図せずにセキュリティ上の脆弱性を生み出してしまうためです。
シャドーIT(そして最近ではシャドーAI)は、従業員が利便性を優先してセキュリティポリシーを回避、IT部門の承認なしにテクノロジーやアプリケーションを使用する際に発生します。これは機密データ漏洩の大きなリスクをもたらしますが、柔軟できめ細やかなゼロトラストは、ユーザーの生産性を損なうことのない適応的コントロールを通じてこの問題に対処できます。
柔軟できめ細やかなゼロトラストは以下を可能にすることで、この問題を解決します。
- 動的AIガバナンス:データ漏洩を防ぎながら承認されたAI使用を許可
- コンテキスト制御:ユーザーの役割、データの機密性、ビジネス目的に基づく権限調整
- リアルタイム監視:生産性を阻害することなく不適切なAIインタラクションを検出・防止
- シームレスなユーザーエクスペリエンス:適切なガバナンスを維持しながらイノベーションを可能にする
最も重要なのは、サイバーセキュリティがすべての組織にとって不可欠である一方で、セキュリティ対策は妥協を強いることなく、保護と利便性のバランスを取るように設計されるべきだということです。現代のレースが安全性とパフォーマンスを妥協なく共存させることができることを示しているように、適切に設計された柔軟できめ細やかなゼロトラストにより、組織はセキュリティと運用の卓越性の両方を達成できるのです。
システムの調和がもたらす勝利
レースは、わずか数秒の差が表彰台の位置を決める極限のスポーツです。重要なのは、単なる個人の競技ではなく、組織全体の連携が不可欠な競技だという点です。どんなに優れた個人のパフォーマーでも、最適化されていないマシンや効率的でないチームでは勝利を掴むことはできません。
同様に、サイバーセキュリティも各要素の細かな調整と最適化が求められ、真の成功は個々のコンポーネントが連携し、シームレスに機能するシステム全体の調和から生まれます。
「柔軟できめ細やかなゼロトラスト」による競争優位の確立
レースが技術革新により安全性とパフォーマンスを両立させたように、「柔軟できめ細やかなゼロトラスト」は企業に新たな競争優位をもたらします。統一プラットフォームによる精密な制御、継続的な監視、そして適応的な最小権限の原則により、限られた予算内で最大限の防御効果を実現できます。
統一されたセキュリティプラットフォームはセキュリティスタックを簡素化し、コスト削減と同時にパフォーマンスとユーザーエクスペリエンスの向上を実現します。プラットフォーム型アプローチへの移行により、あらゆる規模の組織が自社の特定のニーズとコンテキストに適した強力な防御体制を構築できるようになります。
結論、F1とサイバーセキュリティは異なる領域ながら、成功の原則は共通しています。技術、人材、プロセスの統合、そして限られたリソースの最適化が鍵となります。
柔軟できめ細やかなゼロトラストアプローチを採用することで、企業は保護とパフォーマンスの両方を向上させることができます。統一セキュリティプラットフォームを実装する組織は、ますます危険になるデジタル環境での地位を確保するでしょう。
サイバーセキュリティの卓越性を目指すレースが始まっています。勝利は、戦略的統合、運用効率、そして適応的防御の技術を習得した者のものです。
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栄藤 稔(エトウ ミノル)
Netskope Inc. CxOアドバイザー人工知能(AI)、セキュリティ分野における豊富な経験を持つ栄藤氏の専門知識は、ネットスコープのお客様が現在の脅威環境を踏まえた最新の戦略およびアーキテクチャを形成する上で重要な役割を果たします。栄藤氏はNTTドコモ在職時代に、NTTドコモの全サービスプラ...
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