マルハニチロは「Umios」へ──次の100年に向けた「カルチャー変革」の波に乗って変わり続ける
第38回:マルハニチロ 執行役員 古田昌代さん
「自分を越境するとは?」糖分不足に陥る濃密研修で意識チェンジ
酒井:人材育成にも力を入れていますね。経済産業省が策定した「デジタルスキル標準」をもとに、4つのDX人材を定義したそうですね。
古田:実は、経済産業省が提唱するデジタルスキル標準をそのまま当社にあてはめようとしても、合わないんです。そもそも当社には画一的な教育が合わない。過去にExcel勉強会を何回もやりましたが、そのときは覚えるのですが現場に戻ったら元通り。eラーニングの浸透も時間がかかる。
だから、独自の基準を作りました。求めるスキルを大きく4つに分類して「マウスレスでの生産性がアップするキーボード操作はできますか」「業務を見直したことがありますか」など自己判定してもらう。点数が良かった約70人をDXリーダーに認定し、研修を受けてもらうことにしたんです。
酒井:どのような研修を?
古田:「越境するリーダーになるにはどうしたらいいか」という研修です。越境というと、社外や他部署と共創するというイメージがありますが、要は「今の自分を超える」ということなんです。
自分を超えるとは一体どういうことなのか、2日間かけて徹底的に考える。考えすぎて頭が痛くなるので休憩中にチョコレートを出しているんですけど、それが全部なくなる(笑)。まずは思っていることを吐き出してもらうんです。そうすると会社への不満が非常に多く出ます。でも、「変えようとしない自分も加害者だよね。文句を言う前にやろうよ」ということに気づくんです。「変えたい」という気持ちが芽生えない限り、DXは絶対にできません。いくらIT技術を教えたってダメなんです。
この研修を乗り越えられた人たちには、ロジカルシンキングの研修が待っています。改革したいと思っても、ロジカルシンキングができないと結局生産性は上がりませんからね。
酒井:社員の皆さんからの反響は?
古田:研修を受けた70人からは、「この研修は経営層にこそ学びがありそうだ」という声が上がり、経営陣にも受けてもらいました。「自分たちはこういうところが良くないんだ」と気づいたと言ってくれる役員もいて、かなり心を動かされたみたいです。
覚悟を持って頑張っていれば大丈夫 腐っている時間なんてない!
酒井:最後に、古田さんがリーダーとして心がけてきたことや、リーダーを目指す女性にメッセージをお聞かせください。

古田:私は、女性とか男性とか関係ないと思っています。ただ、日本全体を見渡すとまだまだというところももちろんある。何を心がけてきたかというと、「自分がやらなきゃ」という覚悟ですね。
覚悟を持って諦めずに一生懸命やっていれば、絶対どこかで誰かが評価して引き上げてくれる。だから「大丈夫」って、そうみんなに言いたい。なんなら今そこの窓の下を歩いている人にも言いたい(笑)。腐っている時間はもったいないですよ。
酒井:そういう人は、周りも応援したくなりますよね。
古田:そう。改革において社内のハレーションが多いのは当然なんです。どうしようかなと考えていると、社外や社内の仕事仲間が「古田さん、この記事読んだら元気出るよ」と送ってきてくれたりする。何も言ってないけど、あぁ分かってくれているんだなと。一生懸命やっていると、いい仲間と巡り会えます。やっぱり人ですよ。DXは全社的な取り組みで、部門を越えた社員一人ひとりのやる気と実行力によって実現できています。もっと便利で働きやすい環境を、これからも多くの社員と共につくっていきたいです!
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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