【LIXIL岩﨑氏×JTB黒田氏】基幹システム刷新“真っ只中”のJTCリーダーに学ぶ、成功への布石
複雑化したシステム構成が足枷に……「結局は人がすること」だから重視する意思疎通
明確なビジョンと対話が、現場のマインドを変えてゆく
対談の終盤では、視聴者からの質問に答えた。
チームの士気を高める方法
まずは、「基幹刷新プロジェクトチームの志気を、どのように高めてこられたか」という質問。
岩﨑氏は、メンバーが心折れる場面を何度も経験してきたという。その中で学んだのは、小さな成功体験を早く作り、一人ひとりに自信をつけてもらうことの重要性だ。全部を一気に進めるのではなく、小さくターゲットを区切って取り組み、成し遂げた際は最大限の賛辞を送るという。
黒田氏も同様に、プロジェクトの各マイルストーンで成功を共有することを重視している。上手くいったときはチーム全体で振り返りを行い、良かった点や改善点を明確にしながらチームの士気を高めている。
さらに重要なのは、変革の意義を伝えることだ。システムや技術の前に事業担当者と向き合い、様々な立場の人と話し合って最適なゴールを見つけ、意義の高い仕事をしているという認識をメンバーと共有しているという。

システム利用者のマインドセット変革
続いて、「システムを使う側のマインドセットは変わっていっているのか」という問いかけ。システムをモダナイズしても、利用者のマインドが変わらなければ効果は限定的だという本質を突いた質問だ。
黒田氏は、利用者のマインドセット変革には意図的なアクションが必要だと強調する。突然新しいシステムの使用を求めても、利用者が戸惑うのは当然のことで、段階的なコミュニケーションの重要性を説明した。ただし、黒田氏自身も「そういうことがまだまだ足りてない」と謙虚だ。
岩﨑氏は、社内のCX(顧客体験)とEX(従業員体験)に注力し、特にシステム利用者が何に困っているのかを洗い出して改善に取り組んでいるという。昨年からはUI/UXの専門チームも設置し、古いシステムやムダな業務プロセスが数多く可視化されてきたという。
両氏の体験談からは技術偏重になりがちなプロジェクトに対する重要な示唆が見えてくる。システムを変えるのは人であり、人を動かすのは明確なビジョンと継続的なコミュニケーションだ。大きな戦艦の舵取りに迷ったら、この基本に立ち返ってみてほしい。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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