【LIXIL岩﨑氏×JTB黒田氏】基幹システム刷新“真っ只中”のJTCリーダーに学ぶ、成功への布石
複雑化したシステム構成が足枷に……「結局は人がすること」だから重視する意思疎通
リーダーに求められる資質──やらないことを決める決断力
両社のリーダーが共通して強調するのは、決断することの重要性だ。すべての要求を受け入れていては、プロジェクトは永遠に完了しない。どこかで線引きをし、優先順位を明確にして「やらないこと」を決める勇気が必要だ。
「結局、人がやっていることなので」と黒田氏。綿密なコミュニケーションプランを立て、各担当者と密に連携しながら実行していくしかない。それでも完璧はあり得ない。「責任範囲を明確にしても、その隙間は必ず生まれる。それを丁寧に拾い上げる計画と管理が重要」だという。
モダナイズの成否を決するのは、技術力だけではない。人と組織をマネジメントする力。明確な意思決定の仕組みと、地道なコミュニケーションの積み重ね。これこそが、レガシーシステムからの脱却には不可欠のようだ。

プロジェクトを成功に導く「求心力」と「遠心力」
最後のテーマは、成功に導く「推進力」の正体。黒田氏は推進力を「求心力」と「遠心力」のバランスで説明する。自身は求心力を担い、全社レベルでの共通化や大きな変革を推進する。一方で現場レベルでの自主的な取り組みも重要であり、この両者のバランスを意識しながら組織全体を動かしているという。

求心力に必要なのは、リーダーシップと責任感だ。大規模かつ長期間のプロジェクトでは、多数のステークホルダーとの調整が必要になる。黒田氏一人では限界があるため、それぞれの領域でリーダーシップを発揮する人材を育成し、メンバーが主体的に責任感を持って動ける環境づくりに注力している。
「大規模プロジェクトは『大きな戦艦』のようなもので、左に曲がれといってもすぐには曲がれない。全員が目指す方向を理解し、軌道修正を繰り返しながら進むため、自分たちの立ち位置を常に示し続けることが重要だ」と黒田氏。CIO/CISOとして、この大きな舵取り役を担うことを重視している。
一方で、黒田氏が現場のリーダーから評価されているのが判断の緩急だ。早く決めるべき事項と時間をかけて検討すべき事項を適切に見極め、プロジェクト全体の効率化を図っている。この判断力は長年のプロジェクトマネジメント経験で培われたものだという。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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