3ヵ国での同時導入 本社・現地・ベンダーの“三位一体”で挑戦
今回の導入においては「販売管理や在庫管理、調達管理、会計管理をNetSuiteの標準機能で対応すること」また「長期かつ多品種の発注を含む建設プロジェクトの管理機能では、拡張機能を用いた予実管理の実現」を目指したという。
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導入プロジェクトの推進体制は、エグゼクティブコミッティ、オペレーショナルコミッティ、プロジェクトコミッティと、下図のように“3階層”で敷いた。エグゼクティブコミッティはプロジェクト全体の方向性と組織目標の整合性を監督し、リソース配分と予算を承認する。オペレーショナルコミッティは実行方針を決定し、進捗と成果を監督しながらリソースの優先順位付けを行い、重要事項をエグゼクティブコミッティへエスカレーションする役割を担う。そして、プロジェクトコミッティは決定された方針に従ってプロジェクトを推進し、リスクや課題をオペレーショナルコミッティへ報告する役割をもつ。
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導入ベンダー側でも同様に3階層ごとに責任者を設定し、定例会議で進捗管理と意思決定を実施。また、クボタ本社のITシステムサポート部門がシステム選定から導入後のサポートまで並走支援する体制を敷いている。なお、成家氏はプロジェクトマネージャーとして3ヵ国を統括し、各拠点では現地法人社長をトップとして業務リーダーも配置された。
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当初の計画では、3ヵ国同時に要件収集から受入テストまでを実施。タイを8ヵ月半後、ベトナムを9ヵ月半後、フィリピンを10ヵ月半後と、1ヵ月ごとに本稼働を進めていき、2024年内の完了を目指すこととなった。導入プロセスでは、要件収集で業務プロセスの基本情報を収集し、これを基にシステムを構築。その後、機能ごとに事前検証した上で、システム全体の検証と改善を実行する。受入テストを経て社員教育とデータ移行を実施し、本稼働に進むといったフローだ。
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SaaSは基本機能が決まっているため、実際の動きを見ながら検証と改良を重ねていくことが重要だとして、成家氏は「ユーザーは早期にシステムの全体像を把握し、業務をシステムに合わせていくことが必要です」と話す。
実際のプロジェクトでは、様々な課題に直面しながらも、2024年内での3ヵ国本稼働という目標を達成している。講演時点では、NetSuite導入から数ヵ月しか経過していなかったが、既に十分に成果を上げているという。
システム導入で実感している3つの成果
成家氏は、調達・会計(債務)管理業務を例に挙げながら、特に導入効果を感じる点をいくつか紹介した。1つ目は内部統制の強化だ。それまで調達管理部門の表計算ソフトと会計システムが分離していたが、NetSuiteによりデータが一気通貫で流れるようになり、入力ミスなどによるデータの不整合がなくなった。また、業務の標準化と多段階承認により、上司が管理できない業務も減り、不正リスクも低減したという。
また、業務効率化も進んでいるという。たとえば、複数部門にまたがっていた重複業務がなくなり、間接人員の業務負荷が低減したと成家氏は話す。レポートの自動出力により、資料を作成するような定例的な業務も減少したという。
さらに、経営判断の迅速化も実現している。NetSuiteのデータに拠点情報や製品情報、部門情報を紐付けて一元管理できるようになり、多面的な経営分析が可能になった。月次処理を待たずに予実進捗を日次・週次で追えるようになったことで、経営層がタイムリーに事業状況を把握できているという。
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古屋 江美子(フルヤ エミコ)
フリーランスライター。大阪大学基礎工学部卒。大手通信会社の情報システム部に約6年勤務し、顧客管理システムの運用・開発に従事したのち、ライターへ転身。IT・旅行・グルメを中心に、さまざまな媒体や企業サイトで執筆しています。Webサイト:https://emikofuruya.com
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