“触れない”基幹系データをAIへ レガシーを残しながらも「次世代データ連携基盤」を構築する術とは
複雑化する金融システムの課題と対策──4社の視点から “最適解”を探る:セゾンテクノロジーの視点
注目高まる「iPaaS」 レガシーシステムとの“橋渡し”が重要に
岡本:とはいえ、金融機関が運用する基幹系など、ミッションクリティカルなシステムからデータをタイムリーに取得するとなれば、実際には困難がともなうのではないでしょうか。
福泊:そうですね。そもそも金融システムには強固なセキュリティ対策が求められるため、気軽にインターネット環境に接続するわけにはいきません。また、先ほど申し上げた通り、安定稼働を続けているシステムには、あえて手を入れたくないという事情もあります。IT業界では少し前まで、APIを介したサービス間連携が一種のトレンドのように捉えられていましたが、何より安定稼働を重視する基幹系システムの場合、API化すること自体かなりのリスクがともないます。
岡本:では、実際にはどのような手段でデータを取得するのでしょうか。
福泊:レガシーシステムに新たなインターフェースを設けるのではなく、弊社の「HULFT」に代表されるようなファイル連携システムを活用することが一つの答えでしょう。ただし、レガシーシステムからのデータ取得はファイル連携で、クラウドサービスへのデータ投入はAPI経由でといったように、システム全体を俯瞰したときに異なるデータ連携のためのインターフェースが混在してしまいます。こうした複雑性を解決するため、現在注目を集めているのが多種多様なシステムのデータ連携をクラウド上で一括して構成・管理できる「iPaaS(Integration Platform as a Service)」です。
岡本:ここ数年のうちにiPaaSを提供するベンダーは増えており、御社でも「HULFT Square」という製品を提供されていますね。では、iPaaSが今日のエンタープライズシステムにおけるデータ連携の課題をどのように解決するのか、もう少し詳しく説明していただけますか。
福泊:iPaaSは、オンプレミスシステムやクラウドサービスなどの間で行われるデータ連携を、クラウド上で一元的に構成・管理するためのソリューションです。たとえば基幹系システムから発生するデータをクラウド上のAIサービスで利用したい場合、通常はファイル連携システムなどを通じてデータを取得し、それをAPIによってクラウドサービスに受け渡す必要があります。ただし、こうしたデータ連携の仕組みを設計・実装するためには、多くのコストや手間がかかってしまいます。しかし、iPaaSがその仕組みを担うことで、手間のかかるデータ連携を極めて短期間で実現可能です。もちろんAIだけでなく、BIやCRM、SFAなど、さまざまなアプリケーションとの連携も迅速に実現できます。
また、個々のシステム連携を「密結合」として実装するのではなく、iPaaSを介した「疎結合」のアーキテクチャで実現することで、将来的に連携先のアプリケーションやサービスを変更したくなったとしても、容易に入れ替えが可能です。
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吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
提供:サイオステクノロジー株式会社
【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社
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