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大阪ガスが「Energy Brain」で実現したエネルギーマネジメントの自動化とAIエージェントによる次なる挑戦

 大阪ガスが2023年8月に開始した遠隔AIエネルギーマネジメントシステム「Energy Brain」は、機械学習を活用したエネルギー需要予測により顧客の省エネを実現している。同システムの開発では機械学習の運用課題を、Google CloudやクラウドETLツールのTROCCOの導入により解決した。本記事では「気象予測」「データアナリティクス」「最適化計算」の3つの要素技術から、統合開発プラットフォームの構築、需要予測MLOpsの確立、そして今後のAIエージェント活用まで、Energy Brain成功の舞台裏を詳しく紹介する。

(左から)

大阪ガス株式会社 DX企画部 ビジネスアナリシスセンター所長 兼 データ活用基盤統括チーム マネジャー 岡村智仁氏
同 エナジーソリューション事業部 電力サービス開発プロジェクト部 エネルギーマネジメントチーム リーダー 八切好司氏
同 DX企画部 ビジネスアナリシスセンター 副課長 國政秀太郎氏
同 DX企画部 ビジネスアナリシスセンター 小林剛志氏
同 DX企画部 ビジネスアナリシスセンター 嘉祥寺巧真氏

業務用エネルギー需要予測の課題と3つの解決要素

 Energy Brainは大阪ガスが独自に構築したエネルギーマネジメントシステムで、関西圏のホテル、病院、学校、商業施設などに「省エネ」という価値を提供している。この仕組みの核となるのが、機械学習を用いたエネルギー需要予測だ。

 一口に需要を予測すると言っても、顧客ごとに電力・ガスの使い方は様々だ。たとえば、夏冬は冷暖房の需要が増えるが、それ以外の季節の需要は減るといった具合の季節変動もあれば、顧客の事業設備の違い、また時間帯、稼働率を加味した機械の運転状況など、エネルギー需要に影響する要素には多くのものがある。これらの要因から、家庭用と違い、需要パターンが多岐にわたるのが、業務用の需要予測の難しさだ。そこで大阪ガスは、顧客それぞれが将来のエネルギーをどの程度使うかを予測し、結果を設備運用の最適化に役立てようと考えた。

 資源が少ない日本では、これまでも国全体で省エネに取り組んできており、大阪ガスとしても、Energy Brainの開発以前から「省エネ」ソリューションを提供してきた。顧客である事業者側でも、設備管理の観点から、定期的に自分たちのエネルギーの使い方を見直すなどの取り組みが行われてきた。ただし、その頻度はたとえば四半期に一度など、人間が対応可能な範囲に限定される制約があった。開発の背景を八切好司氏は以下のように説明した。

 「システム化すれば、今日の予測結果を明日の運用計画に反映できるようになる。この繰り返しのサイクルで少しずつ改善を積み上げ、もう一歩踏み込んだお客さまのエネルギー効率利用をサポートしたい。また、労働者人口の減少が続く中、設備管理の要員を確保することに困難さを感じておられるお客さまも出てきていると感じる。今は現場をよく知る人たちに任せられても、省人化やナレッジの伝承が重要な課題だ。将来的には、現状のエネルギー効率利用サポートに加え、熟練者のノウハウをシステムに反映したお客さまの運用サポートを実現し、より効率的なエネルギー利用を可能にしたい」(八切氏)

大阪ガス株式会社 エナジーソリューション事業部 電力サービス開発プロジェクト部 エネルギーマネジメントチーム リーダー 八切好司氏

 そのEnergy Brainのシステムを支える要素技術は大きく3つある。

 第一に、先端技術研究所の気象予測である。大阪ガスでは、特定の地域の気象をピンポイントで予測することに過去から取り組んでおり、電力ビジネス事業者向けに電力需要、発電量を予測するサービスの提供を行っている。第二がデータアナリティクスと予測、そして第三が、各種予測の結果を踏まえ、運用計画に展開するための最適化計算である。2つ目と3つ目は、岡村智仁氏が所長を務めるビジネスアナリシスセンターで知見を蓄積し、組織としてのケイパビリティ獲得に努めてきたものだ。

Google Cloud活用で実現した統合開発プラットフォーム ── 「インフラ屋泣かせ」解消の舞台裏

 AIに代表される、次々に登場する新しいテクノロジーを取り入れながら、大阪ガスは各顧客の設備運用最適化を支援するため、エネルギーマネジメントプロセス全体の自動化を目指した。Energy Brainを支えるシステムの開発を始めたのは2019年に遡る。そのリーダーを務めた國政秀太郎氏は、こう語る。

 「私たちのチームが意識しているのは、技術面における『ファーストペンギン』として社内で最初に試してみること。これまでも、機械学習やディープラーニングに代表される最先端の技術をチームで検証してきた。事業部の新規サービスの開発や業務改善のプロジェクトに対して、ビジネスアナリシスセンターが伴走し、共に仕組みの構築を行う中で、蓄積した知見や技術を活用している。Energy Brainは、ビジネスアナリシスセンターの取り組みの一つとして、エナジーソリューション事業部と共同で開発を始めたものになる」(國政氏)

大阪ガス株式会社 DX企画部 ビジネスアナリシスセンター 副課長 國政秀太郎氏

 Energy Brainのサービス開発では、並行して構築を進めていたデータアナリティクスプラットフォームの仕組みが役に立った。ビジネスでAIから価値を引き出そうとすると、様々なデータを一元管理し、効率的なAI開発・運用を実現するための専用のデータプラットフォームが不可欠となる。特に、Energy Brainのように、気象データやIoTデータなどのビッグデータを扱うユースケースでは、プラットフォームの要件は高くなる。多種多様なデータを大量に蓄積し、分析や予測のために取り出す時は、簡単にかつスピーディにできなくてはならない。信頼性、安全性、パフォーマンスに求められる水準も高い。それらのエンタープライズレベルの要件を満たしたものとして採用したのが、Google CloudのBigQueryやCloud Runなどのテクノロジーであった。ビジネスアナリシスセンターでは、これらのテクノロジーを活用して独自の統合開発プラットフォームを構築している。

Energy Brainなどの裏側を支える統合開発プラットフォーム 出典:大阪ガス [画像クリックで拡大]

 現在、このプラットフォームは、Energy Brainの顧客のエネルギー需要予測と最適化計算を支えている。

大阪ガス株式会社 DX企画部 ビジネスアナリシスセンター 小林剛志氏

 さらに、Vertex AIがプラットフォーム上で利用できるようになったことで、運用も大きく効率化した。「今までは機械学習のモデルを学習させるだけでも、インフラ準備に負担がかかっていた。たとえば、GPUリソースを使おうとしたとする。高価なリソースなので、必要な時だけ使い、利用が終わったら自動的にシャットダウンさせたい。この自動化のため、以前はプログラミングや専用インフラの手配が必要で、機械学習のワークロードはインフラ屋泣かせだった。Vertex AIの登場で、Google Cloudに任せられる範囲が大きく拡がった」と、國政氏は評価した。

次のページ
需要予測MLOps確立への道のり ── 個別化と汎用化の「塩梅」を見極める

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

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