データ利活用プロジェクト運営のノウハウを活かしたAIエージェント活用・導入促進
「大阪ガスでは2010年代に『見つける』『解く』『使ってもらう』の3つのデータ利活用プロジェクトの運営ステップを確立させ、全てのプロジェクトで徹底してきた」と、岡村氏は強調する。
まず、本質的な問題をいかに「見つける」かが鍵である。ビジネス現場から挙がってくる課題の多くは、既に顕在化しているものであるため、関係者から聞いた話を鵜呑みにするのではなく、良い意味で疑い深く、データアナリティクスで解くべき潜在課題を含めた本質的な問題を見つけることが重要なのだという。
2つめのデータアナリティクスで問題を「解く」ことでは、現場から仮説・ノウハウをいかに引き出すかがポイントである。
3ステップ目の「使ってもらう」ことでは、データ活用で明らかになった知見を報告すること、もしくは、組み込んだ仕組みを作るだけでなく、今までの業務を変えること、新しい業務プロセス等を追加していくことまでが求められる。どちらの場合も、「わかりました。やりましょう」と変化を受け入れられる人は多くない。だからこそ、事業部の人たちに使ってもらうまで支援することが必要になる。これらの動き方は、生成AIやAIエージェントの活用を今後拡げていく上でも必須であると考えている。

Energy Brainの今後に向けて、ビジネス側の八切氏は「デジタルのプロジェクトに携わって実感したのは、お客さまが欲しいものを作ることの難しさ。お客さまからのご意見、フィードバックをきちんと反映する仕組みを営業フロントときちんと構築することが重要で、この仕組みが機能しないままプロジェクトが進むと、作るべきものと違ったものができあがってしまう。お客さまの声を大切にしながら、取り組みを深めていきたい」と展望を述べた。この発言の背景には、より顧客のためになる仕組みを提供したいという強い思いがある。言うまでもなく、大阪ガスはエネルギーを提供する会社だ。
Energy Brainでも、エネルギーマネジメントの最適化の観点から、顧客の光熱費のコストダウンを提供するが、建物のライフサイクルコストという視点で見ると、エネルギーコストよりも大きい割合を占める要素は存在し、視野を広げ、顧客に「使ってもらえる」仕組みへのブラッシュアップを続ける。
一方、技術実装を担当するビジネスアナリシスセンターは、「超自動化」を視野に入れ、AIエージェントの活用に取り組もうとしている。ビジネスアナリシスセンターが抱えるプロジェクトは他にもある。将来、Energy Brainのようなシステムを構築しようとする時には、企画の段階から、設計、開発、実装、運用までをスケーラブルなものにできることが望ましい。そのためにも、足元の業務の自動化を進めるべく、自律的に行動するAIエージェントの特性を活かし、自動化の対象を拡大していくビジョンを描いているという。「チームでやってみる。うまくいったら次はプロジェクト、その先のお客様へと展開を拡げたい」と、國政氏は今後に意欲を示した。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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