日本IBM、 Instana・Turbonomicなど可観測性を追求するIT自動化ソリューションを発表
AI時代のIT運用は『リアクティブ』から『プロアクティブ』自動化へ
日本IBMが9月4日、AI時代のIT運用自動化戦略を発表した。上野氏と江川氏が登壇し、従来のリアクティブな対応からプロアクティブな自動化への転換を提唱。複雑化するIT環境に対応するため「Instana」による可観測性、「Turbonomic」によるリソース最適化、「Concert」による統合プラットフォーム化を核とした包括的ソリューションを紹介し、将来的な製品統合による運用自動化プラットフォームの実現を目指すとした。

AIと自動化を両輪とした戦略展開
上野氏は冒頭、自動化の重要性について「ジェネレーティブAIの進展により多くの企業がAI活用に取り組む中、AIは企業やビジネスに革新をもたらす一方で、ITの側面では複雑さが増している」と現状を分析した。
AI活用の進展に伴い、アプリケーション数の増加、環境の多様化、ツールの乱立などが現場に多くの課題をもたらしているとの認識を示し、「AIと自動化は両輪として同時に取り組むべき重要な課題だ」と強調した。

IBMのオートメーション製品は、顧客がAIアプリケーション・システムを構築する様々なフェーズで起きる課題やチャレンジを、自動化技術によって克服し解決することを目指している。テクノロジー・ライフサイクル全般にわたって、投資の見える化・最適化からアプリケーション構築、デプロイ、管理まで各フェーズで自動化技術を提供する包括的なアプローチを採用している。

IBMは過去5年間でこの領域に大規模な投資を実施してきた。2020年の可観測性製品Instanaの買収を皮切りに、ITファイナンス管理領域のTurbonomic、今年3月のHashiCorp買収による「Terraform」など自動化製品の獲得を進めている。並行して、マルチクラウド・ハイブリッドクラウドの一元管理製品や、AIを活用したIT運用自動化製品の自社開発も推進している。
エンタープライズレベルの可観測性が運用高度化の基盤
江川氏は、IBMが重視する「エンタープライズレベルの可観測性」について説明。一般的な可観測性がITシステムのフルスタック可視化とIT運用チームへの単一ビュー提供に留まるのに対し、IBMのアプローチはより包括的である。「単に運用フェーズでフルスタックの観測性を実現するだけではなくて、ITシステムの開発、テスト、デプロイ、運用、セキュリティ、財務管理というライフサイクル全般において可観測性が必要」と述べ、縦のフルスタック可観測性に加えて幅広い可観測性の実現を目指している。

具体的なソリューションとして、まずIBM Instanaによるフルスタック可観測性を紹介。Instanaはインフラストラクチャーおよびアプリケーション状態を自動的かつリアルタイムに可視化し、AIを活用した分析機能によってインシデントへの早期対応を実現する。デモでは、サーバーとアプリケーション両方から同じ情報を参照できるコラボレーション機能や、AIによる根本原因分析と推奨アクション提示機能が紹介された。
ネットワーク監視領域では、SevOneがネットワークデータをAIで分析し、異常を事前に検知してネットワーク運用を効率化する。InstanaとSevOneを組み合わせることで、真のフルスタック可観測性が実現される。
プロアクティブな自動化からレジリエンス実現まで
次のステップとして、Turbonomicによるプロアクティブな自動化が説明された。従来のリアクティブな対応から一歩進んで、ITリソースの利用状況をAIで分析し、リソースを自動調整することで、リソース不足によるシステム影響を未然に防ぐ。「リソースが足りなければアプリケーションを止めることがないように、より多くのリソースを割り当てるということを自動的に実行してくれます」と江川氏は説明し、手動実行だけでなく自動実行の設定も可能であることを示した。
さらに包括的な自動化を実現するIBM Concert Workflowsも紹介された。TerraformやAnsibleだけでは対応しきれないさまざまなソフトウェア、ハードウェア、サービスを含む運用作業を自動化し、手動作業の間を埋めるワークフローを提供する。将来的にはAPIを通じてAIからワークフローを実行することも可能になる予定である。

最終段階として、IBM Concertによる持続的最適化を目指す。アプリケーション開発から運用に関わる様々なツールから情報を収集し、360度の可視性を提供する。「ITシステムの状態を包括的かつ持続的に把握し、望ましい状態から逸脱していれば、あるべき姿に戻すための具体的な方法を示し、場合によっては自動的に修正する機能を持つ」という。
上野氏は今後の方向性について、「将来的には、個々の製品を意識せず、必要な機能を必要なタイミングでデプロイできる統合プラットフォームの実現を目指す」と述べている。
日本市場に対しては、多くの顧客がまだ環境別・システム別の監視管理を行っている現状から、フルスタック可観測性の実現、AIを活用したデータドリブンなIT運用、そして長期的なIT環境最適化へと段階的に進化させる支援を提供していく方針を示した。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
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