日本は世界における「愛知県」から「静岡県」へ
株式会社野村総合研究所(NRI)は4月13日(火)、プレス向けセミナー「第130回 NRIメディアフォーラム」を開催した。今回のフォーラムでは、「ICT国際競争力強化の課題と方向性~ICTと社会基盤連携~」をテーマに、同社コンサルティング事業本部 情報・通信コンサルティング部 主席コンサルタントの桑津幸太郎氏が世界のICT市場での日本のポジションや国際競争力強化に向けた施策を紹介した。
「日本のICT産業は世界における愛知県」。現時点の世界のICT市場における日本の地位を桑津氏はそう例える。ユニークな性質を持った10%前後の市場規模を持ち、競争力のある企業も存在しているが、マーケット全体を制覇するほどの重みはない。東京や大阪ほどの経済規模はないものの国内で独特のポジションを占める愛知県のイメージが、世界で見た日本の状況に重なるという意味合いだ。
ただし、そのポジションも長くは続かないようだ。「国際市場における日本の地位は長期低落の中にある。BRICsに代表される新興国市場が成長する過程で、最盛期には15%前後を獲得していたシェアは3%程度まで落ち込む。ICTに限って言えば10数年のうちに現実のものになるだろう。われわれは世界における『愛知県』から、世界における『静岡県』くらいまで落ちることになる」(桑津氏)。
ICT市場における日本のポジションは確保したいものの、人口やGDPの比率を考慮すればシェアの縮小は避けられない。そこで重要になるのが思考回路の転換だ。自らの現状に合わせて生き残りのための効率的な戦略をとること。たとえば、静岡県は愛知県ほどの経済規模はないものの、食品やファッションのテストマーケットとして国内では先端的なポジションを担っている。同様に、ICT市場での先進的な市場という意味で「世界の静岡県」を狙うことが日本の活路だと桑津氏は見る。
それでは、日本のICT産業が掴むべき次のビジネスチャンスとはどのようなものだろうか。桑津氏の見通しによれば、今後はICT自体がトレンドとなることはなくなる。これまでは、PC、携帯電話、インターネットなど新しいICTが現れるたびに、それらを人々に持たせることを目的として自己完結的な成長ができたが、今後はそれが望めなくなるということだ。(→日本のICT業界が狙うべき次の有望領域とは?)