IBM Lotus Expeditor(ロータス・エクスペダイター)とは
前回まで歴史的な背景などの多くの要因により様々なユーザー・インターフェースのアプリケーションがクライアント上で混在しているという現状と、混在によって引き起こされる問題点、ならびにその解決手法について説明をしてきました。第3回目は解決手法の1つとして紹介したコンポジット・アプリケーションを実現可能にする、IBMのクライアント製品であるIBM Lotus Expeditor(以下Expeditor)を紹介します(図1)。
Expeditorにはデスクトップ対応版のみではなくモバイル端末版も存在しています。本稿ではモバイル対応版に関しては説明を割愛し、デスクトップ対応版について説明します。
Expeditorは企業向けのクライアント・プラットフォーム製品であり、高い操作性と豊かな表現力を実現するためのグラフィカル・ユーザー・インターフェースのためのフレームワークと、企業で使われている様々なクライアント・アプリケーションの統合を可能とするための多くのサービスなどを提供しています。クライアント・アプリケーションはExpeditorが提供するフレームワークやサービスなどを利用して実装することができ、以下の5つの特徴を実現することができます。
1. リッチアプリケーション
高度なグラフィカル・ユーザー・インターフェースのフレームワークにより、表現力や操作性などに優れたユーザー・エクスペリエンスを提供することが可能なアプリケーションを実現できます。また、アプリケーションを実行しているクライアントOSとlook & feelの統一を計ることも可能です。
2. Webアプリケーション
拡張可能なWebブラウザー用のコンポーネントにより、既存のWebアプリケーションを含めたすべてのWebアプリケーションをクライアント上で実行することができます。また、「戻る」ボタンの無効化、右クリックの無効化などの拡張により、ユーザーにとって扱いやすいクライアント環境が実現できます。
3. コンポジット・アプリケーション
テクノロジーの異なるクライアント・アプリケーションを同一の画面上で表現し、さらにクライアント・サイドでのアプリケーション間連携を可能とするための仕組みが提供されており、その仕組みをそれぞれのアプリケーションが使用することによりコンポジット・アプリケーションが実現できます。
4. オフライン対応アプリケーション
JavaEEやPortal(JSR 168 準拠)などのアプリケーションを実行するためのコンテナーをクライアント上のサービスとして提供しているため、従来であればサーバー・サイドで実行されるビジネス・ロジックをクライアント上で実行することができます。それによりプレゼンテーション・ロジックからビジネス・ロジックまでのすべてをクライアント内で実行ができ、オフラインに対応したアプリケーションが実現できます。またオンラインであってもクライアント上でアプリケーションのすべてのロジックを処理することで、レスポンスの向上、ネットワーク・トラフィックの削減を実現できます。
5. サーバー管理型アプリケーション
Expeditor上で動作するアプリケーションはサーバーによるアプリケーションの配布、追加モジュールの配布、アプリケーションの無効化などの制御を行うことが可能になります。これによりクライアント・アプリケーションの管理をすべてサーバーに集約することで、クライアントの管理にかかるコストを大幅に削減することが可能です。
以上のような、特徴を持つクライアント・アプリケーションが実行可能なことから、Expeditorは企業で使われるクライアント・アプリケーションのプラットフォームとして最適な機能を提供しているといえます。またExpeditorは、コラボレーション・スイートとして多くのユーザーに使われているIBM Lotus Notes/Dominoの最新バージョンのクライアント製品であるIBM Lotus Notes 8や、リアルタイム・コラボレーション製品である IBM Lotus Sametime 7.5などの、IBMのクライアント製品のベーステクノロジーとしても採用されています。また、Expeditorに対応したパッケージソリューションがIBM以外からも提供されています。