AIが出した答えを、投資家に説明できますか? SAS中村氏が語るAI時代の意志決定リテラシー
AI時代のデータの世界観 #02 対談:SAS Institute Japan 中村洋介氏 × Quollio Technologies 松元亮太氏
データ分析は何のためにあるのか
松元:3つ目のテーマ、「データ分析は何のためにあるか」についても聞かせてください。
中村:(スライドを示して)
人が分析を行う目的には「選択」と「意志決定」と「行動」の3つのレベルがあります。今日、傘を持っていくか、という選択があれば、もっと大きな、選択肢の確からしさを突き詰め、志を持って判断する意思決定もある。
トーマス・ダベンポートが『分析を武器にする企業』で述べた通り、データ自体は価値を生みません。ディシジョンのみが価値を生み出すんです。
分析には4つの水準があります。
1. 記述的(Descriptive):何が起きたか
2. 診断的(Diagnostic):なぜ起きたか
3. 予測的(Predictive):何が起きるか
4. 処方的(Prescriptive):何をすべきか
意志決定に繋がるのは、最後の「何をすべきか」まで示されたときです。ここまで機械が全部やるのが、世の中で言われる「自動化」です。
BIは素晴らしいツールですが、記述的な分析──何が起きているかを多面的に見せるだけです。そこから「このデータが示すものは何か」を解釈し、「なぜそうなったのか」要因を分析し、「今後どうなりそうか」を予測し、だから「何をすべきか」を考えて判断し、意志決定してアクションに繋げるのはすべて人間の仕事です。
自分たちが今どの水準の分析をしているのか、自覚していますか? それを自覚しないまま、BIと自動化の話を一緒くたにすると、人間の意思や事業的な文脈が見失われてしまいます。
松元:最近はAIエージェントがPrescriptive(処方的)分析までできるようになってきていますね。
中村:ええ。ただ、自動化できるのは「こうなったらこうする」というアクションまで事前に決まっているものだけです。決まっていない、あるいは揺らぐ可能性があるものを自動化すると、現場はわけが分からなくなります。
AIエージェントはあくまで「下書き」を提供してくれるもの。人間の意志決定を代替できるかというと、特に経営的な判断に関しては、まだしばらくは難しいんじゃないでしょうか。人間の意志決定の力を信じ、それを補助するツールとしてAIや分析ツールを評価しておくべきだと思います。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
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