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【中外製薬×ふくおかFG】AI時代のDX推進「実行・投資・文化醸成」の壁に、両社はどう立ち向かった?

トップダウンとボトムアップを組み合わせた、部門横断のDX推進施策を語り合う

従来のROI算出では限界……IT投資における包括的な視点の重要性

 アイデアが形になり始めると、次に立ちはだかるのが「スケール段階での投資判断」の壁だ。アイデアを形にし、ビジネスの成果につなげられるようスケールするには人的リソースや資金調達が必要不可欠だが、AI投資に関しては従来のようなROIの分析やKPIの設定が難しいという問題がある。

 「おそらく、この問題がいちばん大きな壁なのではないか」と武重氏。たとえば、業務の一部にAIを導入し、短縮された作業時間を人数換算で金額に置き換えるといった従来のROI算出のアプローチも可能ではあるものの、これでは「皮算用」の域を出ないだろうと語る。

 そこで同社が重視するのは、AIを含めた包括的な変革の視点だ。AIの導入と同時に組織の集約やプロセスの見直しを行い、これらを総合してROIを算出することが重要だという。

 さらに重要なのは、投資の時間軸に対する考え方の転換である。「データマネジメント、データガバナンスの確立、データ連携のためのシステムアーキテクチャ構築といった基盤整備は、短期的には効果が見えにくい。しかし、中長期的には企業成長の重要な差別化要因になる」との見解を示した。

点から線、そして束へ 中外製薬は段階的な投資戦略を採用

 中外製薬では「点」から「線」、そして「束」への発展を見据えた段階的な価値創出の拡大と投資戦略を採用している。たとえば、前頁で語られた約900件ものアイデア(=点)から実行するものを選定するときは、それを起点として「如何に業務プロセス全体を高度化できるか」という視点を重視しているという。最終的なバリューを明確に示すことで、投資判断がしやすくなるというわけだ。

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 このアプローチの背景には、「AIは育てていくもの」という考えがあると金谷氏は述べる。「データも充足していない、AIモデルも充足していない中でAI活用の価値を評価するにあたって、ひとつだけの視点で評価するのは難しい。少し先の未来も見据えて評価を定める必要がある」とした。

 また、同氏は中外製薬の本業である「創薬プロセスとの類似性」を活用したアプローチも有効だと語る。

 「AI投資は、医薬品開発のリスクと可能性に関する議論と近い部分があります。中長期にわたって薬を開発し、成功確率も低い中でどう成功に導くかというディスカッションは、経営陣にとって非常に馴染み深いものです。そのため当社は、AI投資の不確実性に対して経営陣の理解が得やすいという特徴があるのかもしれません」(金谷氏)

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人と文化の壁を打破へ 中外製薬はトップダウン×ボトムアップで進める

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森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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