【中外製薬×ふくおかFG】AI時代のDX推進「実行・投資・文化醸成」の壁に、両社はどう立ち向かった?
トップダウンとボトムアップを組み合わせた、部門横断のDX推進施策を語り合う
人と文化の壁を打破へ 中外製薬はトップダウン×ボトムアップで進める
技術や戦略の壁を乗り越えたあとに立ちはだかる壁が、「人と組織文化の変革」だ。中外製薬では、トップダウンとボトムアップの組み合わせを実践している。金谷氏は「トップマネジメントの声をいかに現場に届けるかが重要。社外への発信を通じて、外部に出た情報から社内の人がその発言の重要性に気づくケースもある」と説明する。
同時に、現場の自発的な動きを支援する仕組みも整備している。ボトムアップ型の組織を希望する社員が多くいることから、そういった社員たちが活躍できる環境を整える必要があるとして、DILの実施や社内ネットワークを構築できるような仕組みづくりに励んでいるという。
また、もうひとつ重要な視点として「部門長の理解と支援」が挙げられた。中外製薬では、各部門における部長クラスの社員が、各部門のDXリーダーに就任する。現場から上がった声を実現できるよう、背中を押す環境づくりを部門内で推進しているとのことだ。
ふくおかFGにおける「フィジカル」重視の文化醸成
ふくおかフィナンシャルグループでは、「フィジカル」を重視した取り組みを展開している。同社はグループ全体が巨大なこともあり、営業店と本部の関係性が薄れてしまうという課題があった。そこで、「変革共創プロジェクト」なるものを立ち上げたという。
このプロジェクトは、営業店と本部の担当者が、現場で直面している課題や顧客ニーズなどを共有しながら一緒に企画立案をするというもの。この取り組みには営業店から530人、本部から250人ほどが参加し、約780人が126のチームに分かれてそれぞれの企画に取り組んでいる。このプロジェクトでは、組織横断的な相互理解の促進を狙うため、異なる背景を持つメンバー間の融合に向けた工夫をしているという。
今から3年ほど前、内製開発でアプリケーションを作り始めた時期はビジネス的な視点をもつ銀行員と、中途採用でやってきたエンジニア側の意見が衝突し、対立構造になっていたそうだ。
「この課題を解決するにあたって、いちばん効果があったのは『机を一緒にすること』だった」と武重氏。お互いをリスペクトするためのコミュニケーションを実現するには、同じ空間で過ごすことが何よりも効果的だったようだ。
また、AI導入に対してよくある問題が「現場の抵抗」だろう。同氏は、実際の使用体験が理解を促進すると語る。
「融資の稟議書にAIを活用しようと提案した際、当初審査部門から反対意見が出ました。『審査が不正確なものになる』『銀行員のスキルが低下する』といった懸念がありましたが、いざ導入してみたら、意外にもAIが我々も気づかないような視点のサジェスチョンをしてくれたんです。これは、現場での教育にもつながるのではと評価されました」(武重氏)
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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