GenAI登場で大きく変わったAI開発者の仕事、WorkdayのAIリーダーが重んじる開発の哲学とは
ナイキのAI責任者を経てソフトウェア企業へ、AIの変遷とともに歩んできたシェーン・ルーク氏に尋ねる
AI開発で重んじる3つの柱、根底にある“Human-centric”
WorkdayのAI製品開発には、3つの重要な柱があるとルーク氏。1つ目の柱は「深いビジネス価値の創造」だ。単に多くの機能を提供するのではなく、ビジネスプロセス全体を根本的に改善する“深い機能”を重視している。
具体例として、同氏は財務監査の変革を挙げた。従来の財務監査業務は人間の制約に合わせて設計されており、監査人は大量の文書読み込みや監査計画策定に多大な時間を要する。数十億行の会計元帳は、抽出検査に頼らざるを得ない。しかし、AIの活用によりコンピューターが情報を瞬時に取得・処理できるようになり、数秒で10億行以上の文書を確認可能となった。担当者は、もう詳細な情報処理を心配する必要はない。これはまさしく“ビジネスプロセス変革”である。
2つ目の柱は「データハンドリングの透明性」だ。AIを利用する際にユーザーが最も懸念しているのが、データの取り扱い方法である。Workdayは、先述したデータ分離の維持に加え、ユーザーへの制御権の付与も重視し、ユーザーが不安を感じる機能については自由にオン・オフできる仕組みを提供している。
加えて同社は、「Agent System of Record」というエージェントの一元管理ソリューションによって、同社が提供するエージェントはもちろんのこと、他社が提供するエージェントや、ユーザー自身がWorkdayプラットフォーム上で構築したエージェントをすべて統合管理できる環境を構築している。
3つ目の柱は「出力の信頼性確保」だ。データをもとにAIが出力したものを顧客が信頼できるかどうか……そんな懸念への対応として、Workdayはテストによる事後確認ではなく、設計段階からの安全性配慮を重視している。最初の工程から安全重視で設計を行い、事後のテストでも安全性を再度確認するのだという。
「たとえば、人事システムを開発する中で、AIがキャリアの選択肢を提示してくれる機能を設計するとしましょう。その場合には、出身地や性別などといった人口統計学的な要因を排除し、所在地や出身大学などの間接的な相関要因も避けるなど、バイアス除去に細心の注意を払っています」(ルーク氏)
こうした取り組みの根底にあるのは、同社が掲げる“Human-centric(人間中心)”な哲学だ。「Workdayが顧客やユーザーのためにあることを忘れない。それから、AIは企業や仕事の在り方をより良いものにし、人の力や想いを最大限に発揮するためにあるということを、常に根底に据えている」とルーク氏は強調した。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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