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顧客マスタデータをクレンジング率「99.7%」で維持するNEC、AIエージェント活用も進む同社の挑戦

NEC独自の「勝ちパターンマスタ」整備、重要となる3要素

NECの“秘伝のタレ”を整理した「勝ちパターンマスタ」 AIエージェントの活用も進む

 3つ目の勝ちパターンマスタは、NEC独特のものだ。「長年のビジネス活動を通して受け継がれてきた、営業の“秘伝のタレ”のようなナレッジを整理した」と近藤氏。これは、エース級の営業の社員たちの行動を言語化し、体系的に整理してSalesforceの商談オブジェクトとして実装したものだ。BtoBビジネスの商談ライフサイクルは、受注までに2年から3年かかるものも珍しくない。いつ誰が何をどのように行動するかを、誰もが参照できるようにしておくことで、組織スキルの底上げが期待できる。

 勝ちパターンマスタの中身は、大きく「顧客との合意事項」「業界特有のポイント」「ノウハウ」に分けられる(図2)。顧客との合意事項は、どの業界でもさほど違いはないが、入札時期から逆算してやっておくべきこと、業法などの営業が知っておくべきポイントはそれぞれ異なる。

 そして、ノウハウは原田氏お墨付きの要素だという。たとえば、顧客にデモを見せる場合、デモが成功した時は制限時間を超えても熱心な質疑応答時間が続く。担当者の個人が「うまくできた」「できなかった」を判断するのではなく、顧客の反応をもとにその後のステップに続く成否を評価するようにしている。

Salesforceに実装したエース営業のナレッジ(図2)

出典:NEC(クリックすると拡大します)

 また、経験の少ないメンバーは効果的な質問方法を知らないことが多い。マスタにはセリフごとにコツが書かれているため、読んで、試して、実際に成功したら、他のノウハウも活用したいと思ってもらえる好循環ができるという。

 AIエージェントがこれらのマスタデータを利用できれば、多くの営業に価値がもたらされる。なぜなら、すべてのデータがクリーンで信頼できるものだからだ。その代表例が、顧客マスタと商材マスタを利用する「アカウントプランニングAIエージェント」である。このエージェントは、社外のデータと社内のデータを統合してから、SWOT分析を行い、ターゲット企業に提案するべき商材を営業にレコメンドしてくれる。

アカウントプランニングAIエージェント

出典:NEC(クリックすると拡大します)

 この仕組みを機能させるには、顧客マスタのデータ品質が信頼できる水準でなくてはならない。顧客の強みがわかれば、その強みをさらに強化するために何ができるか。弱みがあるならば、その弱みを克服するために何ができるか。それぞれの状況に合う商材は異なる。その特定を行うには、商材マスタの品質も信頼できるものでなくてはならない。営業だけでなく、AIエージェントも信頼できるマスタにアクセスできることが、結果として説得力のある分析結果につながるのだ。もちろん最終判断は営業に任されている。

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今後はAIによるプロセスの自動化へ 非構造化データも有効活用

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

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