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中外製薬が挑む、マルチクラウド時代の「聖域なき」コスト管理

創薬イノベーションを支える「FinOps」戦略

FinOpsはツールではなく「文化」である 全社戦略へ昇華させるためのロードマップ

(提供:日本アイ・ビー・エム株式会社)

 先述した課題を踏まえ、中外製薬ではIBM Cloudabilityの効果を最大化しながら、さらなるイノベーションの加速に向けたロードマップを描いている。

 「まずは年内にFinOpsの教育・推進体制を確立します。そして来年度からは、ユースケースの高度化を通じて社内に『FinOps文化』を定着させ、デジタル部門だけのプラクティスではなく、全社的な戦略として昇華させていく計画です」(金氏)

 最終的には、全社的なFinOps戦略実現のためのPDCAサイクルを構築し、継続的に回していく体制を目指す。

 加えて、マルチクラウド戦略とFinOps戦略は「融合」していなければならないとも強調する。AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、それぞれの得意分野を活かしながらベンダーロックインや地政学リスクを回避するような、マルチクラウドならではのメリットを最大化するためには、「コストの増大」や「運用の煩雑化」というデメリットをコントロールする必要があるからだ。そして解決のためのツールこそがIBM Cloudabilityであり、今後社内でさらに重要なポジションを占めていくという。

 「FinOpsは、ただツールを導入して終わりではありません。FinOpsというフレームワークの概念を『人』と『文化』に融合させることが重要です。これは一人の担当者だけで実行できるものではなく、人的リソースが必要です」(金氏)

 海外の先進事例では、すでに多数のFinOps専任メンバーがアサインされており、組織として定着しているという。ガートナーのハイプ・サイクルを見ても、日本は海外に比べて2〜3年遅れているのが現状だ。

 そうした現実があるからこそ、AI時代におけるクラウドコストの最適化に取り組む効果は大きく、そのポテンシャルは非常に高いとする。最後に金氏は、「段階的にプライオリティを見定め、(FinOpsに関する)社内の知識と成熟度を高めていくことがイノベーションを支える鍵になるでしょう」と述べるのだった。

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この記事の著者

岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)

1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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