今後の10年間はクラウドへの移行の時代になる
VMwareは2010年5月18日、報道関係者などを対象としたブリーフィングを開催。VMware, Inc シニアバイスプレジデント Raghu Raghuram(ラグー・ラグラム)氏が同社の製品戦略などについて解説した。
「これからの10年はクラウド・コンピューティングのアーキテクチャへの移行の時期になる」とRaghuram氏は言う。特に「アーキテクチャ」という言葉を強調したのは「単にAmazonやGoogleのようなWebサービスを利用するということではなく、ITシステム全体の構築、運用を検討する時代になる」という考え方ゆえ。
ユーザー企業側の意識もクラウドへと大きく傾いているようだ。氏が提示した調査結果によれば、各企業のCIOは2010年の関心事項として「仮想化(1位)」と「クラウド(2位)」をあげた。特に後者は前年の14位からの急浮上とあって、ここ1年間で人々の関心を一挙に集めていることがうかがえる。
柔軟なリソース利用やスピーディな環境構築、従量制課金など、CIO達が期待を寄せるクラウド・アーキテクチャの優位性を支えているのはVMwareが牽引する仮想化技術。Raghuram氏は「仮想化は橋であり基盤。物理的に実装されているデータセンターをクラウドベースのものにしていくための鍵となる」と今後のIT業界における自社の役割の大きさに自負を見せる。
企業システム、クラウド化への王道とは?
実際にクラウド環境を構築するためには、現行データセンターからの移行が課題となる。多数の顧客企業が辿ったステップを分析した結果、クラウドへの移行には3つのステップが存在することがわかったという。
最初のステップはやはり仮想化。サーバやネットワークといったITのワークロードを仮想化し、省スペースやコスト削減などの効果を目指す。仮想化での経験を重ねると、基幹システム、データベース、ExchangeやSharePointなどの業務アプリケーションもその対象となる。第2段階での目的は単純なコスト削減というよりも、信頼性や管理性、柔軟性といったものになる。
「多くの企業はステージ1、もしくはステージ2のあたりにいる状況。平均的な企業だと25~30%程度のサーバを仮想化している。ITプロダクションからビジネス・プロダクションの領域へと移行している段階」(Raghuram氏)だという。
早い時期から仮想化に取り組んできた先進ユーザになると、同社が「IT as a service」と呼ぶ第3段階に達している。コンピューティングのリソースをプールとして管理し、すべてのユーザが共有インフラ上でシステムを動かすようになる。いわゆるプライベート・クラウドと呼ばれる状態だ。
セキュリティ的な懸念に対処しつつ、サーバの集約や迅速な環境構築といったクラウドのメリットを享受できるほか、パブリック・クラウドとの連携という面でも有効だ。社内インフラをプライベート・クラウドとしておけば、アプリケーションをコードの書き換えなしに社外のクラウド環境に移動させることが容易になる。