味の素と東京海上が示す、Snowflake/Databricksを活かした“AIレディな基盤構築術”
現場を巻き込んだ地道な定着策とは? データプラットフォーム構築・運用をリードするリーダーが議論
生成AIの台頭により、企業のデータ活用はさらに高度化し、単なる分析を超えた次のフェーズへと移行しつつある。しかし、その足元にあるデータプラットフォームの整備において、サイロ化したシステムや形骸化した運用に頭を抱えるIT部門は少なくないだろう。2025年11月7日に開催された「Data Tech 2025」では、製造業と金融業という異なるフィールドで大規模なデータ基盤構築をけん引する2名のリーダーが登壇。モデレーターの谷川耕一氏(EnterpriseZineチーフキュレーター)の進行のもと、味の素の小林文宏氏と東京海上日動システムズの木村英智氏が、全社規模のデータプラットフォーム選定から現場への定着に向けた対策まで、その実践知を語り合った。
Excelリレーでデータ収集も……味の素は経営基盤「ADAMS」を構築
データプラットフォーム構築の検討は、両社ともに深刻な課題意識から始まっている。海外売上比率が6割を超える味の素は、データ活用においてはアナログな手法が残っていたと小林氏。「各拠点から必要なデータを集めるために、Excelファイルをメールで受け渡す、いわゆる『Excelリレー』が行われていました」と当時の状況を振り返る。
一方、東京海上グループのIT戦略を担う東京海上日動システムズでは、かねてよりデータ分析の取り組みはあったものの、2017年以前は各業務システム担当者に個別にデータ抽出を依頼する運用だったという。木村氏は、当時の課題について「ある時、大量のデータ抽出をシステム担当者に依頼したところ、『そんな大量のデータを書き出すディスク領域はありません』と断られたことがありました。たまたま新しいディスクを購入したタイミングだったので事なきを得ましたが、分析以前に、データを置く場所すらない状況でした」と語る。
また、分析処理も個々の端末やサーバーのスペックに依存しており、大規模データを扱うには夜間にSQLを流して翌朝結果を確認するといった非効率な作業が発生していた。データ量が増大する保険ビジネスにおいて、スケーラビリティの欠如は大きな課題だったという。
こうした課題を解決するために、両社はデータを整備・管理するプラットフォームの構築に着手する。味の素が構築したのは全社データマネジメントシステム「ADAMS(Ajinomoto Data Management System)」だ。小林氏は、ADAMSが単なるシステムではなく、2030年のDXロードマップを実現するための経営基盤であることを強調する。
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ADAMSの設計思想について、小林氏はデータを住宅に例え、以下のような階層構造で説明した。
- 1階(発生源):各事業活動で日々発生する生データ
- 2階(蓄積層):データを収集・統合し、管理する場所。ここがADAMSの中核となるデータ基盤
- 3階(活用層):BIツールや分析アプリケーションなど、ユーザーがデータを活用する場所
この2階と3階を支えるものとして同社が採用したのが、SnowflakeとAWSだ。ADAMSの基盤は、AWS上の情報公開基盤やコネクタ群と、データウェアハウス(DWH)としてのSnowflakeで構成されている。この構成により、国内外の拠点からデータを吸い上げ(2階)、必要な形に加工してユーザーへ提供(3階)する流れを自動化した。
Snowflake選定の理由として、小林氏は「運用保守の容易さ」「拡張性」「料金体系」の3点を挙げる。特に重要だったのがコスト構造だ。オンプレミス時代のように利用料金が最大となるピーク時に合わせてハードウェア投資をするのではなく、クラウドならではの“使用した分だけ支払う”という課金モデルが、投資対効果をシビアに見る経営層への説得材料として機能したという。
「2021年の導入当初は、データ基盤への投資に対する社内の理解を得るのが難しい局面もありました。だからこそ、スモールスタートが可能で、使った分だけ課金されるSnowflakeのモデルが最適だと考えました」(小林氏)
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