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普及期を迎えたエンタープライズ・クラウド

~要点整理と着目すべきポイント~


“持たざるIT”の推進が自社のITインフラにもたらすメリットに着目して、クラウド・コンピューティングの導入を本格的に検討し始める企業が増えている。クラウドという大きな潮流、パラダイムは企業のIT部門が担うシステム/アプリケーションの企画・構築・運用のあり方をどのように変革し、またIT部門の役割をどういった方向に変えていくのか。本稿では、エンタープライズ・クラウドの要点整理を行ったのち、現時点での国内企業における導入・利用状況を示しつつ、導入時の重要な考慮点を示したい。

クラウドサービスの形態

 システムやアプリケーション、データなどのITリソースを社内のデータセンターに置かず、ファイアウォールの外側から調達するクラウド・コンピューティング。「cloud =雲」のコンピューティングという、いささか不思議な呼称が、次世代のITを担うパラダイムとして語られ始めたのが2007年頃で、しばらくはIT ベンダーの新しい宣伝文句にすぎないといった受け止め方をする向きも多かった。だが、具体的なクラウドサービスが次々と登場し、そのメリットや可能性が次第に認知されていった結果、現在では、企業IT システムの企画・構築・運用のあり方を考える際に欠かせないキーワードになりつつある。

 まずは、クラウドサービスの形態を、企業IT システムにおける利用の観点から改めて整理してみる。ここでは、構築・運用形態、ITレイヤ、料金徴収方法の3つの分類をそれぞれ示して説明する。

構築・運用形態による分類

 構築・運用形態による分類は、すでによく知られているクラウドの基本的な分類だ。基本となる考え方は、エンドユーザーがアクセスするIT リソースが、企業のファイアウォールの内側にあるか外側にあるかである。

パブリック・クラウド
「パブリック・クラウド」は、企業のファイアウォールの外側に構築される形態で、不特定多数の企業ユーザーや個人ユーザーなどを対象としている。クラウドの登場初期には、単にクラウドと言えばこのパブリック・クラウドの形態を指していたが、IT ベンダーやサービス事業者各社によって「プライベート・クラウド」の形態が示されるようになってからは、明確な区別のために、パブリック・クラウドの呼称が一般的になった。

プライベート・クラウド
 プライベート・クラウドは、企業のファイアウォールの内側に構築される形態で、その企業ないしは企業グループのユーザーを対象に提供される。この形態は、2008年頃から、従来の「オンプレミス(自社運用)」のシステム/アプリケーションと同等のセキュリティや可用性を実現するクラウドとして、主にシステム・ベンダーによって謳われるようになった。

 このプライベート・クラウドは、仮想化技術によってIT リソースをオンプレミスのサーバに集約したシステムと実質的に違いはない。ただし、呼称が指し示すニュアンスは若干異なっており、オンプレミスの仮想化システムが主にITインフラとしてのハードウェア構成を示しているのに対し、プライベート・クラウドと呼ぶ際には概して、利用の用途が明確で、そのサービス・レベルや運用管理手法までが考慮された「サービス」であるという意味合いが強い。

コミュニティ・クラウド
コミュニティ・クラウドは、パブリック・クラウドとプライベート・クラウドの中間的な形態で、特定の企業間で共通の目的において構築・運用され、共同利用されるサービスを指している。

 これらの構築・運用形態が広く認知されていくなか、ここ1、2 年では「ハイブリッド・クラウド」あるいは「ハイブリッドITインフラ」の形態を提唱するベンダーやサービス事業者が目立って増えてきている。

 ハイブリッド・クラウド/ハイブリッドIT インフラは、「非コア/コモディティ型」とされる業務領域のシステムやアプリケーションをパブリック・クラウドで調達し、「コア/競争優位型」とされる業務領域や、コンプライアンス、セキュリティの要件からパブリック・クラウドでの構築がふさわしくないものについては、プライベート・クラウドないしはオンプレミスで構築するという適材適所型のアプローチである。

 その構成イメージを、各レイヤの特性と併せて示したのが図1である。このようなハイブリッド環境は、特に、要件の異なる様々なシステム/アプリケーションからなる大規模なITインフラを持つ企業の間で、クラウド導入の最適解として期待が高まっている。

図1:ハイブリッド・クラウド(ハイブリッドIT インフラ)の構成イメージ

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ITレイヤによる分類

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河原 潤(カワハラ ジュン)

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