テクノロジー投資の責任所在を、中央集権型から分散型へ
では、行動変容を起こすための階段をどう架けるのか。熊坂氏は、5つの具体的な打ち手を示した。ただし5つのうち、完全に実行できたのはまだ1つだという。
1つ目は、数字を言葉に変える「RTB・GTB・TTB」の枠組みを確立することだ。お金の使い道を、Run the Business(RTB:現行ビジネスの維持・運用費用)、Grow the Business(GTB:ビジネスの成長・拡大費用)、Transform the Business(TTB:ビジネスの変革費用)の3つに分類することで、その配分比率を決めやすくなり、会社が真に進みたい方向へ向かっているのかどうかを視覚的に認識できる。
この施策はまだ実践段階には入っていないが、社内の監査部門はテクノロジー投資の統制に関心を示しているようで、熊坂氏は「この取り組みが徹底できれば、社内監査のニーズに応えられるのでは」との期待を示した。

2つ目の施策は、各部門へのアカウント権限移譲と、予実管理の能動化である。この施策は、既に組織に実装が完了したとのこと。各部門にApptioのアカウントとアクセス権を払い出し、四半期ごとの予実と実績の見直しを自らの責任で実施してもらう取り組みだ。
多くの企業では、上からコスト削減の要求を押しつけられ、現場は受け身(受動的)な姿勢でそれに応えているのが実情だろう。しかし、H2Oリテイリングはこれを能動的な姿勢へと転換させ、「コストを削る」のではなく、「やりたいことがあるなら、自分で説明してお金を調達する」という考え方に組み替えたのである。責任の所在も、中央集権型ではなく部門ごとの分散型へと転換した。
続く3つ目の施策は、お金(数字)にストーリーを宿らせること。これは、一部で実践が始まっているという。実例として紹介されたのは、Grow(ビジネスの成長・拡大)にカテゴライズされていたあるシステムの分類見直しについてだ。成長・拡大のための投資だと現場からは聞いていたが、改めて投資案件の話をよく聞いてみると、どう考えてもGrowに該当するとは思えなかった。そこで調べてみると、実態はRun、すなわち安定運用のための投資だったとのことだ。
実際、そのシステムをRunへ分類し直してみると、システムの要件も大きく変わり、約12%の最適化余地が浮かび上がった。この経験から熊坂氏は、他の数字にも同じように物語を吹き込めるのではと考えている。すべて人手でやるのは至難の業だが、今後ApptioのAI機能が進化することで、簡単にストーリーとの紐づけが可能になるかもしれないと同氏は期待を述べた。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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