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2026年冬号(EnterpriseZine Press 2026 Winter)特集「AI時代こそ『攻めの経理・攻めのCFO』に転じる」

理想論で終わらせない「AIのためのデータ整備メソッド」

AI-Readyな基盤をダメにする組織の共通項──データを活かせる組織へ変える“3つの仕組み化”とは

CDOは「翻訳者」であれ──AI時代に求められる“データ責任者”の役割とは

「全員をデータサイエンティストにする」という発想を捨てる

3. 人材のスキル変革と交流

 そして3つ目の柱が「人材のスキル変革と交流」。1つ目、2つ目の柱に沿って組織体制と協働の仕組みを整えても、それを担う人材のスキルがともなわなければデータ活用は成功しません。

 データ利活用の定着において、ツールの操作習得以上に重要なのが、「データで考える思考習慣」を組織全体に根付かせること。そのためのカギとなるのが「継続的なデータリテラシー教育」と「役割に応じた段階的な育成プログラムの設計」です。

 よく見られるデータリテラシー教育の失敗ケースとして、「全社員に統計知識や分析スキルを一律に求めるアプローチ」が挙げられます。こうした極端な教育は「データを使いこなせない自分は遅れている」という焦りや罪悪感を生み出すだけで、自発的な学習意欲につながりません。

 育成プログラムの設計では、まず役割に応じたスキルレベルを明確に定義し、「自分はどこを目指せばよいか」を各社員が理解できる状態を作ることが出発点となります。

役割に応じた「3層構造」の育成プログラム

 実践的な育成プログラムは、役割に応じて大きく「3つの層」に分けて設計するとよいでしょう。

 第1層は「全社員向けの基礎リテラシー」です。自部門のKPIをダッシュボードで読み解き、数字の変化に気づいて行動できる水準を全員の底上げ目標とします。

 この層で統計の専門知識は不要。「この数字が上がると何が起きるか」「この変化は正常か異常か」を自分で判断できるようになることがゴールです。短時間のワークショップを実施し、無理なく継続できる設計にすることで業務部門の人間が無理なくデータを扱えるようになります。

 第2層は「データ活用推進人材の育成」。先ほど述べた各部門の推進担当者を主な対象とし、BIツールの操作や基本的なデータ分析ができる水準を目指します。特に最近は、生成AIが組み込まれたBIツールが多いため、様々な観点から質問を行うことで、より深いインサイトを自然に得られるようになります。

 なお、もし生成AIが組み込まれたBIツールを利用できない場合には、ダッシュボードをPDFなどに出力して、生成AIに読み込ませることでも代替できます。

 第3層は「データ専門人材の高度化」です。この層ではデータエンジニアやアナリスト、データサイエンティストといった専門職を育成するために、外部研修や資格取得支援、社外コミュニティへの参加促進など、継続的なスキルアップを組織として支援します。また、専門人材が机上のシミュレーションだけでなく、現実のビジネス課題に貢献できる環境を整えることで、能力を発揮できる場を用意することも重要です。

 いずれの層においても共通して重要な点が「データと向き合える環境の整備」。それぞれの役割に応じたデータの向き合い方を定着化させることで、“当たり前にデータを見る”環境にすることが重要といえます。

クリックすると拡大します

まとめ

 本稿では、データ基盤を真に活かすための「一体化された組織体制」をテーマに解説してきました。“守りのIT”から“攻めのIT”への転換は、技術や仕組みも重要ですがそれだけでは完結しません。仕組みの構築と合わせて、CDOをはじめとする経営層がデータ戦略をけん引し、IT部門とビジネス部門が目的を共有して協働し、そして組織全体がデータで考える文化を育てていく──これらの要素がそろってはじめて、データ利活用は組織に根付きます。

 重要なのは、完璧な仕組みや体制を一度に整えようとせずに、実現可能な範囲でまずは小さく始めて、着実に進めていくこと。それが、データ利活用を実現する強力な手段になると筆者は考えています。

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この記事の著者

林田 宏介(ハヤシダ コウスケ)

合同会社デロイト トーマツのシニアスペシャリストリード。システム開発会社、外資系総合コンサルティングフォーム、外資系ベンダー2社を経て現職。メインフレームからIoTの領域で、アプリケーション開発からR&Dでのプロダクト開発、アーキテクトまで幅広く手掛ける。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/24212 2026/07/01 09:00

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