経済産業省、東京証券取引所、情報処理推進機構(以下、IPA)の3者は、デジタル技術を駆使して中長期的な企業価値向上を成し遂げている上場企業を選ぶ「DX銘柄2026」の選定企業発表会を2026年6月5日に開催した。前身となる「攻めのIT経営銘柄」を含めると10年以上の歴史を持つ制度だが、今年度は大きな転換点を迎えている。生成AIの急速な進展や不確実性の高まりを受け、審査基準において「AIの利活用」「データ環境の整備」「企業間連携」への注力度が引き上げられたのだ。もはやデジタル化は単なる業務効率化のツールではなく、AIを軸に組織、企業文化、そしてビジネスモデルそのものを根本から変革する「AX(AIトランスフォーメーション)」のフェーズへと突入している。本稿では、最高峰である「DXグランプリ企業2026」に輝いた3社の実践事例と、審査の舞台裏で交わされた評価委員たちのリアルな議論をレポートする。
選定企業に共通する2つの特徴:データ活用環境と企業間連携
発表会の冒頭、経済産業省 経済産業副大臣の山田賢司氏は、昨今の急激な環境変化に触れ、次のように強調した。
「今後は単なる業務効率化のツールではなく、AIを軸として業務そのものや組織、企業文化・風土を変革し、企業のありようを根本的に変えていくことで競争力の強化につなげていく『AX』の視点もますます重要となっていきます」(山田氏)
さらに山田氏は、今回の選定企業の特徴として「AIでの利活用を可能にするためのデータ環境の整備」と「個社単独では実現困難な新たな価値創出へ結びつける企業間連携」の2点を挙げる。選定企業の多くが既にデータを十分に活用できている段階に到達しているという。
また、主催者の一角である東京証券取引所 執行役員の礒本直樹氏も、「攻めのIT経営銘柄」としてスタートした10年以上前からの歩みを振り返りつつ、「今回からは、AIにもより重点を置いて銘柄選定にあたっています」と語る。資本市場の観点からもAI投資が企業の持続的な成長評価に直結している点を示した。
(左から)経済産業省 経済産業副大臣 山田賢司氏
株式会社東京証券取引所 執行役員 礒本直樹氏
独立行政法人情報処理推進機構 理事 三谷慶一郎氏
こうした厳格な審査を経て、2026年度は「DX銘柄2026」に30社、「DX注目企業2026」に17社が選定された。さらに、特に傑出した取り組みを継続している企業を称える「DXプラチナ企業2026-2028」には、日本郵船とソフトバンクの2社が選ばれている。
「DX銘柄2026」選定企業一覧
(引用:経済産業省「『DX銘柄2026』『DX注目企業2026』『DXプラチナ企業2026-2028』を選定しました」)
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そして、DX銘柄2026選定企業30社の中から、独自のビジネスモデル変革において最も優れた実績を上げているとして、最高峰の「DXグランプリ企業2026」に選出されたのが以下の3社である。
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ブリヂストン
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ミスミグループ本社
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三井住友フィナンシャルグループ
IPA 理事の三谷慶一郎氏が「毎年応募企業のレベルはどんどん上がっており、当落の差は随分小さくなってきている」と評する通り、いずれの企業も各業界を牽引する存在である。しかし、このグランプリ3社をはじめとするDX銘柄2026選定企業と非選定企業の間には、データ活用の進捗や社員のスキル可視化において依然として差が残っているという。次章では、DXグランプリ企業がどのようにして「壁」を乗り越えたのか、取り組みの裏側に迫る。

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- この記事の著者
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小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)
EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。
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