評価の裏側:「1業種1社」の撤廃/ITリーダーへの期待と要望
発表会を締めくくりでは、2026年度の審査を担った評価委員たちが登壇し、審査の舞台裏と日本企業への提言をパネルディスカッションで語り合った。
登壇者(順不同)
- 岩澤有祐氏(DX銘柄2026評価委員会委員、東京大学大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 准教授)
- 角田仁氏(DX銘柄2026評価委員会委員、デジタル人材育成学会 会長)
- 吉原宗雄氏(DX銘柄2026評価委員会委員、株式会社SBI証券 投資銀行本部 シニアマネージングディレクター)
- 【モデレーター】伊藤邦雄氏(DX銘柄2026評価委員会委員長、一橋大学経営管理研究科 一橋大学名誉教授、一橋大学CFO教育研究センター長)
モデレーターを務めた伊藤氏は、今年の審査方針に大きな変化があったことを明かした。従来は「1業種1社」を原則として選定してきたが、その縛りを外し、大きな括りの中で評価したという。
「その結果、市場で実際に競争しているライバル同士が、同じ舞台で選ばれる形になりました。スコアが高くても縛りのせいで落ちていた実力のある会社が、今年は正当に評価されたと感じています」(伊藤氏)
また、伊藤氏はDX銘柄企業のポートフォリオが、日経平均やTOPIXといった市場平均を明確にアウトパフォームしている最新データを提示し、「投資家はバランスシートに載っていない無形資産、つまりDXやAIを使いこなすケイパビリティを見ようとして対話している」と、資本市場からの期待の大きさを裏付けた。
DX銘柄2026評価委員会委員長、一橋大学経営管理研究科 一橋大学名誉教授、一橋大学CFO教育研究センター長
伊藤邦雄氏
今年から新たに審査委員に加わったSBI証券の吉原氏は、週末を返上して1社につき2時間以上かけて申請資料を読み込んだ日々を振り返りつつ、投資のプロの視点から次のように語った。
「AIによって人間の認知能力をはるかに超えるケイパビリティが手に入る時代に、経営トップが『一体あなたは何をしたいのか』という根源的な意思、つまりパッションが問われています。パッションがあるからミッションが生まれ、それを達成するためにオペレーションが作られる。社歴が長い企業でもAXを機に、もう一度ビジョンを再定義してオペレーションに流し込めている企業は高く評価できました」(吉原氏)
デジタル人材育成学会 会長の角田氏は、選定企業のレベルが上がる中で、一歩先を行くキーワードとして「アセスメント(評価)」と「データマネジメント人材」を挙げる。
「優れた企業は、研修をやりっぱなしにせず、本当に育ったのかをスコア化して可視化しています。そして喫緊の課題はデータマネジメント人材です。多くの企業でデータマネジメントが重要だと言いながら、『社内に何人いるか』を答えられる企業はほとんどありません。SMFG様のように、10年前から本社にデータマネジメント専門の部署を置き、全社に可視化して人を配置するような取り組みが、今後の日本には必要です」(角田氏)
(左から)東京大学大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 准教授 岩澤有祐氏
デジタル人材育成学会 会長 角田仁氏
株式会社SBI証券 投資銀行本部 シニアマネージングディレクター 吉原宗雄氏
東京大学大学院の岩澤氏は、AI研究者の観点から、次回の評価で見極めたい点に言及した。
「申請書に素晴らしい事例が書かれていても、本当に現場の社員一人ひとりまで普及しているのか、外からは分かりにくい部分があります。もっと具体的に業務プロセスがどう変わったのか、たとえば『AIを導入した結果、なくなった仕事は何ですか?』というレベルまで踏み込んで聞いてみたい。また、各社が日進月歩のAIの技術動向をどう捉えているか、その理解度も評価のポイントになっていくでしょう」(岩澤氏)
岩澤氏はさらに、「AIによって知識が必要なくなるということは絶対にない。それっぽいけれど嘘をつくAIの回答を見極めるために、人間は今まで以上に主体的に学ぶ必要がある」と付け加えた。
最後に、角田氏は応募を検討するITリーダーに向けて、「客観的な事実を書くだけでなく、予算制度のリアルな壁や、企業文化をどう変えようとしたかという苦労話も含めたストーリーを記述してほしい。人間が審査しているからこそ、そのパッションが膝を叩く評価につながります」とエールを送った。
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- この記事の著者
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小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)
EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。
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