未知の金融犯罪を「合成データ」で先に予測、サンプルの少ないデータでも人工的にモデリングできる時代に
SAS Institute ステュ・ブラッドリー氏[リスク・不正対策・コンプライアンス SVP]
最初の「一貫したガバナンス環境」構築が肝心、経営アジェンダとして組織全体でやるべき
ただし、データのモデリングやエンジニアリングを行うのは主に技術者であり、現場で実際に不正調査に当たるオペレーターは非技術者だ。ここで両者が共通の認識と理解を持ち、実際の現場で役に立つデータを生み出せなければ意味がない。また、AIで人工的に生まれたデータを組織の意思決定の材料とする以上、組織全体の納得を得られる信頼性も必要だ。
AIを意思決定に用いる文化の浸透には、トップのコミットが必要だとブラッドリー氏。SASは生成AIが登場した当初から、「信頼できるイノベーション」という形でAIを受け入れる組織文化の醸成を訴えてきた。AIのアウトプットを基に上流で下した決定が、下流に予期せぬ影響を与えた場合でも、組織としてその影響を適切に評価できるよう、データが持つ潜在的なバイアスを常に理解しようと努めなければならない。
最初に着手すべきは、「一貫したガバナンス環境」の整備だ。それができれば、AIによってフロントからバックオフィスまでを支援する、一定の信頼性が確立されたデータとレポートが得られるようになる。そして最後の意思決定では、ヒューマン・イン・ザ・ループ(Human in the Loop)を維持する体制を作る。いったんここまでを組織全体で整備して、その後にいよいよ一部の意思決定を自動化するためのチャレンジに乗り出すのが順当なプロセスだろう。
この一貫したガバナンス環境を担保するための仕組みをSASは提供している。SASのソリューションはすべて「SAS Viya」のアーキテクチャ上に構築されており、ユーザー組織はSASの各製品をどのように活用していようとも、データマネジメント、データモデリング、テスト、デプロイ、効果測定、さらにはガバナンスインフラにおいて、一貫したアプローチを保てるように設計されているという。
「不正対策ソリューションであれ、アンチマネーロンダリングであれ、コンプライアンスであれ、リスク管理ソリューションであれ、SASのプラットフォーム上では同じガバナンス構造と同じ機能が適用されます。SASモデルを使う場合でも、Pythonなどのオープンソースモデルを使う場合でも同じです」(ブラッドリー氏)
これに関連してブラッドリー氏は、多くの組織が未だ不正対策を後回しにした状態でアプリケーションを展開している現状を指摘した。競争を重視するあまり、攻め一辺倒のイノベーションに傾倒してしまうのだ。「アプリケーションの開発初期段階から、不正リスクやコンプライアンスをすべて考慮し、防御のコア機能として組み込むべきだ」と、同氏はセキュリティ・バイ・デザインにも通ずる設計思想とプロセスの変革を訴えた。
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材しているほか、DX推進や、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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