「イタリア発」の技術が日本での浸透狙う──フィジカルAI時代のセキュリティ・スタンダードとなる?
フィジカルAIのネットワークが遮断されたとき、そのデバイスやロボットをどうやって守るのか
イタリア・ローマ発のセキュリティスタートアップ「Exein(エグゼイン)」に注目が集まっている。OT/IoTやフィジカルAIのカーネル層に直接埋め込むことでデバイスのランタイムセキュリティを確保する同社の製品が、フィジカルAI時代に新たなスタンダードの一つになるのではと期待されているからだ。従来のデバイス保護や組み込み型のセキュリティとは何が違うのか。また、新たに設立した日本法人が掲げる戦略とは? 同社の最高商務責任者であるゲイリー・ウォルシュ氏にインタビューを行った。
既にダイキンなどが採用、カーネル層に埋め込むセキュリティ
“イタリア発”のサイバーセキュリティ企業と聞くと、日本では珍しく感じる方も多いだろう。しかし、Exeinは既に企業評価額で17億ドル(約2600億円)に達するユニコーンだ(取材時点)。2026年9月には、さらに2億7,000万ドル(約420億円)の資金調達も発表した。ローマで創業し、現在はEU、米国、台湾、そして新たに法人を設立した日本にも拠点を展開。IoT機器や組み込みデバイス、フィジカルAIに特化した独自のセキュリティ製品を手掛ける。思えば、イタリアも日本と同じく伝統的にものづくりが盛んな国だ。
今回インタビューに応えてくれたゲイリー・ウォルシュ氏もまた、同社のテクノロジーに惹かれて参画した一人である。同氏は、以前は長年Microsoft(マイクロソフト)でIoTのビジネスに携わってきた。しかし、Microsoftのエコシステムに閉じた世界だけでなく、より世界中のあらゆる種類のデバイスにリーチできるExeinのポテンシャルに惹かれ、同社への参画を決意したという。
同社が開発・提供するのは、デバイスのファームウェアやカーネル層に直接組み込むタイプのリアルタイム監視・制御ツールだ。産業機器やOT/IoTなどの製造・設計段階で直接セキュリティ機能を埋め込む。機器がクラウドや外部ネットワークに接続していない状態でも、自律的に脅威を検知して防御できる点が特徴だ。OSは現在、Linuxのみに対応しているが、ゆくゆくは対応OSの種類を広げていくとのこと。
オンラインに依存せず、いついかなる状況でも立ち上がるセキュリティ。攻撃が起動される前に、カーネルレベルで脅威をブロックする。そして機器パフォーマンスへの負荷も非常に小さい。こうした特徴から、侵入・攻撃後の挙動を検知する古典的なEDRでは追いつけないマシンスピードの攻撃に対しても、ランタイムセキュリティによる保護を実現できる点が強みだ。現在は、以下3つの主要製品を市場に展開している。基本的にはセットで稼働する製品だと捉えてよい。
- Exein Analyzer:出荷前のファームウェアのバイナリをスキャン・分析する製品。ソースコードは不要。AIを活用し、ファームウェアの脆弱性や構成ミス、SBOMを自動検出する
- Exein Pulsar:デバイス稼働中の防御を担う製品。Exeinのセキュリティにおけるコアエンジンである。カーネルレベルで動作し、リアルタイムで不審なプロセスを遮断する。eBFP技術により、Linuxカーネルのソースコード変更や再起動が不要で、軽量&低負荷
- Exein Photon:Pulsarが収集したすべてのデバイス/フィジカルAIのデータを一元管理できる運用プラットフォーム。クラウド/オンプレミスの管理画面で、大量のデバイス資産の状況を一元的に可視化し、ガバナンスの効いた制御を可能にする
ウォルシュ氏は、日本企業の事例としてダイキンを紹介した。ダイキンでは、スマートビルディングのマネジメントでExeinのセキュリティが利用されているという。ビル内にある電力の制御システムや空調システムなどに埋め込まれている。
ちょうど2026年10月に、フランスのスーパーマーケット数百店舗で冷蔵・冷凍設備の設定温度が50℃以上に不正操作され、大きな損害を被るサイバー攻撃が発生したが、そうした異常も未然に検知して予防的に遮断できるようなイメージだ。
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)の分野を中心に、ソフトウェア/ハードウェアを問わず国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材。そのほか、DX推進、IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。※取材のご案内等は個人のメールアドレスか、EnterpriseZine編集部の問い合わせ窓口にお願いいた...
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