データセンター事業よもやま話
「●●の○○はご覧になりましたか?あそこはイスが素晴らしい・・・」―こんな調子で次々に耳より情報を教えてくれる高野さん。かなり細かい情報を持っておられるご様子。今後の取材のためにいろいろと聞き出します。
「都心にそこそこ近くて土地が安いということで、江東区にはデータセンターが多いのですが、最近は神奈川の都筑区が盛り上がっていますね。●●はおしゃれですよ。あ、あと××が破たんしたところを△△が買い取ったところが…来年には☆☆に新しいデータセンターが…」
ちょっと待ってください、なんでそんなに詳しいんですか。趣味ですか?趣味のデータセンター欲ですか?
「いえいえ、データセンター事業者ネットワークがありましてね、情報交換が盛んなのです。よく言われることですが、データセンターの従来型のビジネスって不動産業と似ているんです。たとえば、100ラックの規模の案件があったとする。仮に、うちが50ラックしか用意できないとしましょう。ここでできませんといってその案件をふいにしてしまうのか?そうではなくて、仲のいいデータセンターを紹介するんですね。時期と規模がとても重要なんです。そんなこともあって、データセンター事業者同士が、連携する場合も多いんですよ」
それは初耳でした。かならずしも競合、というわけではないんですね。
「そうですね。埋まらないデータセンターを、他のデータセンターに売ってしまうというようなこともある。データセンターの中にいろんな企業のデータセンターがあるというような状態です」
データセンターがデータセンターにデータセンターを貸す!そんなことがあるんですね。ちゃんと棲み分けはできているのでしょうか。
「棲み分けというか、まあ、ひとことでデータセンターといっても、各社の生業としている事業によってサービスのポイントがだいぶ違ってくるんです。たとえば、キャリア系企業はNWサービスにより力点を置いており、補完的協業関係を組めることも多いです」
御社の場合はいかがですか?
「うちの場合、アプリケーションの保守、運用等込みのお客さんが多いですね。当社は、もともと会社の成り立ちが、住友商事のITに携わっていたこともありまして。住友グループ関係の会計システムだのの開発をメインにしていました。最近はほかの企業のECサイトの開発を行い、それの置き場所としてデータセンターをどうぞ、という流れもあります」
場所ありきではなく、開発から、サーバーまで買ってもらって、その置き場所としてデータセンターを用意しました、という形ですね。
「ただ、それだけですべて埋まるわけではないんですね。最近は逆のパターンで、場所を貸すことから関係を始めるケースもありますよ。いずれにせよ、従来型のビジネスはなくなっていくと思います」
クラウドサービスのように、サーバーのリソースを貸す、といった考え方ですね。
「当社のデータセンターは床面積でいえば、そんなに大きいほうではないんです。だから、運用込でやっていかないといけない。データセンター事業ってお金がかかるんですよ。しかも、常に投資していかなくてはいけないし。そんなに儲かるビジネスじゃない。場所だけ貸して儲かるわけではない。とくに規模の小さいデータセンターは付加価値が必要です。アウトソーシングという付加価値。その中の器として、データセンターがあるといったイメージですね」
なるほどなるほど。この後、高野さんには、おすすめデータセンター情報をいくつも教えていただきました。社名は出せないので割愛しますが、いつか必ず取材に行きたいと思います。
今回の記事はここまで。高野さん、但馬さん、外村さん、ありがとうございました!
さて、単なるハコモノ見学として始まった本企画ですが、だんだんサービスのトレンドですとかですね、業界のつながりとかですね、風習とかですね、おおげさですけど、そういったものが垣間見えてきてしまいましたよ。もちろん、そんなことはものともせずに、今後も単なるハコモノ見学を続けていくつもりであります。さあ、次はどこだ、どこに行く―データセンターの旅はまだまだ続きます…