「コンプライアンスや監査対応という面が、SAPERPの強みとして受け取られている」
SAPは、38年にわたり世界の代表的な企業に導入されてきたERPパッケージのパイオニアであり、現在でも代表的なベンダーだ。
ERPパッケージは、ビジネスプロセスや人、会計のすべての情報を統合的に収集し、整合性を取る形で繋げて把握できる設計になっている。つまりERPを導入し、正しく運用している企業では、ヒト・モノ・カネの流れをごまかすことはできない。特にSAPERPは、監査のためにERPの中を確認する機能が充実しているため、監査人側もSAPが入っている企業であれば、どういうポイントをチェックすればいいのかが分かっているという。
実際、SAP ERPを導入し、J_SOXなどの対応作業を経験した企業からは「監査法人から、SAP導入企業は内部統制の基本的な部分はクリアできていると評価された」という声を聞くのも事実だ。
SAPジャパンの松村浩史氏は「コンプライアンスや監査対応という面が、SAP ERPの強みとして受け取られている」と語る。そのほかにもSAPのERPパッケージは機能豊富で、企業側の幅広いニーズに応えることが可能な設計になっている。
しかし、一方で、それは中堅中小企業にとって導入のカスタマイズに大きな負担を要し、高コストにつながることを意味してきた。こうしたことから、「SAP ERPは大企業向け」というイメージがあるのも確かだろう。
ところが中堅中小企業であっても、ビジネス環境が激変する中、解決すべき課題は大企業と変わらなくなってきている。最近では、大企業が中国、東南アジア、インドなどに進出する際、一緒に出ていく部品メーカーのように、市場や労働力確保を求めて海外に拠点を設けるケースも増えている。そのため、「海外の言語、法律などにも対応し、日本国内と統合して使えるERPパッケージ」というニーズが強まる傾向にあるようだ。 SAPは開発部門の中にグローバリゼーションサービスという、世界中の要件に対応する専門組織を持ち、各国向けの機能を提供しているため、海外進出にともなって現地にERPを展開する上での不安が少ない。松村氏によれば、「それまで手組みの自社開発システムや、小回りのきく国産パッケージで管理していた企業が、グローバル化を視野に入れた段階でSAPに打診が入る案件が増えている」という。