日本の「現場力」を復活させるには
「IT Initiative Day 2010情報活用スペシャル」の基調講演では、早稲田大学ビジネススクール教授の遠藤功氏が登壇。「現場力強化とIT活用」と題して語った。世界的不況に直面している中で、「安くしなければ売れない」という意識が蔓延している。しかし、巨大新興国において自らの大市場を背景に登場している “ジャイアント・プレイヤー”に対抗し、日本企業が低価格で生き残ることは困難だ。遠藤氏は、「脱コモデティティ」=プレミアムにこそ活路があると語る。実際、優れたビジョンや戦略、オペレーションによってグローバル市場で成功を収めている日本企業も多い。その成否を分けているのは、企業の「現場」が生み出している価値そのものだ。
遠藤氏は現場の品質の高さこそ競争力の源泉であり、足元の競争力を強化しうるIT投資に注力すべきと提言する。「戦略」「現場」「IT」の三位一体により、日本は次の50年の成長の「入り口」に立つことが可能になる。
この基調講演に続き、第2セッションでは日立製作所の吉村誠氏が同じく現場力をテーマに「現場の課題をITが解決する!」と題して語った。日本の競争力の源は現場にあると言われてきたが、団塊世代の大量退職、経営悪化による人員削減により、現場の体力が落ちている。同時にITの発達でコミュニケーションの中心が1対1のメール等になり、現場の会話による幅広い経験知やノウハウの浸透が難しくなっている。
強い日本を取り戻すために「現場力」が重要だとすれば、その復活、強化策はあるのか。確かにITの普及はコミュニケーションの手法を変えたが、一方で業務を効率化し、改革している。組織面では、人員異動が激しいフレキシブルな組織が志向され、グローバル化で海外オペレーションが増えている。単純に高度成長時代など以前のスタイルに戻すというのは、非現実的といえる。
そこで吉村氏は、かつては有能な上司や経験豊かな先輩社員などにより培われていた「現場力」を生み出すサイクルを、ITのサポートで回すことを提案する。それは「個々の力」を「組織の力」とし「強い現場」を実現するものだ。事例としてピックアップされた現場の課題は、生産依頼を外注し、納入されたコンポーネントを組み立てるという大規模なITプロジェクトにおけるものだ。その解決をサポートする製品の例として、SOAプラットフォームのCosminexusが紹介された。